海運の国内3位 LNG船に注力、2500億円の投資で船隊を増強
まずは概要を紹介します。
川崎汽船は海運の大手です。1919年に現在の川崎重工業(当時は川崎造船所)の船舶部門を分離して設立されました。「Kライン」のブランドで自動車船やドライバルク船(乾貨物ばら積み船)、LNG船(液化天然ガス船)などを運用しています。売り上げの規模は国内3位の水準です。
【主な海運企業の売上高(2024年3月期)】
・日本郵船:2兆3872億円
・商船三井:1兆6279億円
・川崎汽船:9623億円
出所:各社の決算短信
自社で直接運営する事業のほか、持分法適用会社のONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)ではコンテナ船を運用しています。ONEは海運大手3社(川崎汽船、日本郵船、商船三井)のコンテナ船事業を統合して設立したものです。川崎汽船の利益は、ONEを含む製品物流事業が大半を占めています。
【川崎汽船のセグメント情報(2024年3月期)】
※製品物流の経常利益のうちONEからの持分法による投資利益:456億円
足元で注力するのがLNG船です。2027年3月期までに契約を積み上げ、関与隻数を75隻以上へ、中長期的には100隻以上へ拡大します(2024年3月期実績は46隻)。同時にLNG船へ2500億円を投じ、船隊の増強も図ります。
LNGは海洋輸送の需要が増加しています。背景には世界情勢があります。ロシア・ウクライナ情勢から、欧州でロシアからのパイプライン輸入が減少したことで海運への転換が進みました。また中東情勢の悪化から、スエズ運河を避けアフリカ大陸を南へ迂回する喜望峰ルートが増加し、航海距離が伸びたことで需給がひっ迫します。
さらに、米国の動きも注目です。トランプ大統領は2025年1月、就任演説でLNGを含むエネルギー資源の開発と輸出に言及しました。その促進を目的とした大統領令にも署名しています。
川崎汽船はLNG船を増大し、需要にこたえる計画です。