◆パフォーマンス上位にはニュータイプのバランスファンド

パフォーマンスランキングのトップは「ダブルライン・シラー・ケープ米国株式プラス<ヘッジあり>」の6.32%、「同<ヘッジなし>」が4.68%で続き、第4位には「タフ・アメリカ(ヘッジあり 資産成長型)」が2.24%で入った(第3位の3.23%の「ビルドアップ型ベイリー・ギフォードインパクト投資F2021-04(限定追加型)」には既に新規投資ができない)。

「ダブルライン・シラー・ケープ米国株式プラス」は、米国株式の割安と評価されたセクターへの投資効果に加えて、安定的なインカム収入を狙えるグローバル債券に対する投資を2つの収益源とし、トータル・リターン・スワップ取引を活用することで、限られた資金で2つの戦略に同時に投資した場合と同様の値動きを享受することをめざす。ファンドの純資産総額200%相当分程度の資産に実質的に投資することになる。このファンドで株式の投資にあたって割安の判断の目安として使うケープ・レシオは、一般的なPER(株価収益率)が単年度のデータによる指標であるのに対し、過去10年間の物価変動の影響や長期の利益水準を考慮した中長期的な投資尺度として開発された指標だ。従来では一般的でない投資手法を活用することで運用の付加価値を高めている。

「タフ・アメリカ」は、主に米ドル建ての債券、高配当株式、REIT等に実質的に分散投資し、安定したインカムゲインの確保と中長期的な信託財産の成長を目指す。具体的には主に米ドル建てのさまざまな種類の債券等に分散投資し、投資環境の変化等に応じて、債券種別の配分比率を機動的に変更することで、中長期的な収益の確保を目指す「トータルリターン・ファンド」と、主に高配当株式、REIT、転換社債等を投資対象とし、利回り水準に着目して分散投資するとともに、投資環境の変化等に応じて、資産配分比率を機動的に変更することで、中長期的な収益の確保を目指す「エクイティ・インカム・ファンド」に投資して、その組み入れ比率を適宜見直すという運用を行う。一般的なバランスファンドと異なるポートフォリオの構成になっている。

このように運用の仕組みが複雑化していくと、投資家が商品を理解することが難しくなり、それが敬遠される理由にもなる。一般的なバランス運用ではリスク分散に限界があり安定的な運用成績が獲得できなくなってきたという近年の投資環境が運用戦略を複雑化させているといえる。パフォーマンスが伴ってくれば、これらファンドについても理解しようという投資家は増えることだろう。

執筆/ライター・記者 徳永 浩