長期デフレのトンネルを抜ける日本のポジションが相対的に高まる
――2025年、投資家が注目すべき点は?
リスク要因のひとつは政治の不安定さだ。国内では夏の参院選まで石破政権がもつかどうか。さらに不安定なのが欧州の政治情勢である。特にドイツではショルツ首相の連立政権が崩壊し、総選挙が25年2月23日に実施される。連立が瓦解したドイツに続き、フランスでも内閣総辞職が決まった。欧州の政治的な不安定さの背景には反EU(欧州連合)の空気がある。ドイツでもフランスでも極右政党が支持を伸ばしている。
25年のテールリスクとして「Dexit」を挙げたい。「Deutschland(ドイツのドイツ語による呼称)」と離脱を意味する英語「exit」を組み合わせ「デグジット(Dexit)」、つまりドイツのEU離脱である。
もちろん可能性は極めて低い。だからこそ、テールリスクなのである(テールリスクとは、実現する確率は低いが起きたら大惨事になるようなリスクのこと)。
もしも、そんな事態になればユーロの通貨システムも瓦解し、欧州発の世界恐慌にまで発展するかもしれない。
だからこそ、そんなことが起きる可能性は万にひとつもないが、可能性がゼロでない限り、「デグジット(Dexit)」の悪夢は市場を揺らし続けるだろう。
先日、中国の長期金利が日本を下回ったことが話題となった。昔は日本が唯一、長期デフレに悩まされ、低成長・低金利の代表国だったが、その立場が逆転したようだ。
しかし、驚くことに、今度はドイツの30年債利回りが日本のそれを下回った。
中国も、ドイツも「ジャパナイゼーション(日本化)」に陥り始めている。
世界経済にとっては憂うべき事態である。しかし、そこに少しの光明を見出そうとするなら、国際的な資産配分の観点からは日本株の買い材料になる。中国もダメ、欧州もダメとなれば、相対的に日本のポジションが高まるからだ。中国と欧州、ざっくり言って世界の半分がジャパナイゼーションに陥ろうとするなか、日本はそれを克服し、ようやく長いトンネルを抜け出ようとしている。海外とのサイクルがあまりにも違いすぎるが、今般は逆にそれが有利な立ち位置となりそうである。
こうしたことに加えて、前述の日本企業の構造改革が日本株相場の下支え要因となって大きな崩れはないだろう。仮に「令和のブラックマンデー」のような急落があっても、すぐに買戻しが入るだろう。
マネックス証券
チーフ・ストラテジスト
広木 隆氏
上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。帝京平成大学・人文社会学部経営学科教授。社会構想大学院大学・客員教授。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。2010年より現職。テレビ東京「モーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。