マネックスグループの会長である松本大氏によって、1999年に創業されたマネックス証券。インターネット証券の黎明(れいめい)期に産声を上げて以来、顧客オリエンテッドな金融サービスを提供し続けている。

そんなマネックス証券は、2024年1月にNTTドコモとの資本業務提携、イオン銀行との業務提携をスタートさせ、大きな話題となった。こうした異業種との提携の狙いは何か。 提携の手ごたえはどのようなものか。マネックス証券の清明祐子社長に話を聞いた。

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――NTTドコモ、イオン銀行との提携がスタートして7カ月が経過しました。また、新NISAもちょうど同じタイミングに始まりました。2024年前・後でどのような変化が見られましたか。

マネックス証券に口座を開こうとするお客様は、投資未経験者よりも圧倒的に経験者が中心でした。例えば米国株式の品ぞろえが豊富だとか、銘柄スカウターや投資力診断など、マネックス証券でしか利用できない各種ツールを使ってみたいというお客様が、マネックス証券に口座を開いてくださっていたのです。

その傾向が2024年に入ってからがらりと変わってきました。口座を開設してくださるお客様のうち、投資未経験者の方々が増えてきたのです。これまでマネックス証券で投資信託を購入される方は、積立よりもまとまった資金で一括購入するケースが多く見られたのですが、2024年に入ってからは積立契約の比率が上昇してきました。

またNISA口座についても、旧制度のもとでは一般NISAを選ぶ方の割合が圧倒的に高かったのですが、2024年以降はつみたて投資枠を利用する方が増えています。

このように投資初心者の方たちの口座開設比率が高まったのは、新NISAがスタートしたことも理由のひとつではあるのですが、やはりNTTドコモとの資本業務提携、そしてイオン銀行との業務提携による効果が高かったと見ています。

マネックス証券 取締役社長執行役員 清明祐子氏

―――入口が1つではなく、3つになったことで、お客様の流入が増えたということでしょうか。

もともとマネックス証券は、「投資の民主化」を掲げてスタートした証券会社です。そのため、投資家にとって便利で役に立つと思われる、さまざまなサービスを開発して、マネックス証券のお客様に提供してきました。

実は、私どもは基幹システムを内製化しています。これは証券会社でも珍しいケースです。システムの内製化は、コストや労力が格段に増えるのですが、さまざまなサービスを開発する際の自由度が高まります。他社システムだと、どうしても付きまとってしまう制約から解放されるのです。その結果、お客様の要望に対して、柔軟に対応しながらさまざまなサービスを開発できることを強みとしてきました。

ただ、どれだけ良いサービスを開発しても、証券会社はどうしても敷居が高いイメージがあります。

実際、NISA口座の総数は全ての金融機関を合わせても3月末時点で約2300万口座です。多くの方にとって投資はまだ生活から遠いところにあるのだと思います

この距離を縮めるにはどうすればいいか、「マネックス証券には、いいサービスがあります。便利なツールもあります」と言っているだけでは、広がりに限界がある……それを突き詰めて考えました。その答えがNTTドコモやイオン銀行との提携でした。

NTTドコモは携帯電話事業やdポイントを通じて、個人の生活になくてはならない存在ですし、イオン銀行は日本最大級の小売業である、イオングループのグループ企業です。いずれも個人の生活に密着した存在であり、そこと組むことによって、お客様と私どもの距離、ひいては金融と生活の距離を縮め、一人ひとりに寄り添うサービスが提供できると考えたのです。

※編集部注…NISA口座を作ることができる18歳以上の人口は1億700万人ほどなので(総務省 「人口推計2023年」)、2割超の人がNISA口座を作っている一方、8割近くの人がまだNISA口座を持っていないことになる。