――こうした提携により投資未経験者の方による口座開設も増え、ますます投資のすそ野は広がるのだろうと想像できます。新たな層である投資初心者を取り込んでいくうえでの課題はありますか。

投資経験者がお客様の多くを占めていたマネックス証券のサイトやアプリは、いささか投資未経験者には不親切なところがあるのではないか、と思っています。したがって、これからはより多くの投資未経験者の方々にも投資を楽しんでもらえるよう、7月の組織改定で私の直下にUIUX部を置くことにしました。これにより、ユーザーインターフェース(UI)、ユーザーエクスペリエンス(UX)の質を改善、強化していきます。

金融サービスは、初心者でも分かりやすいコンテンツを作っているつもりでも、例えば「約定」や「受渡」といった専門用語が多く、それを目にした時点で、投資未経験者は拒否反応を示してしまいます。

それを少しでも減らすためには、金融や資産運用のことを全く知らない人でもストレスなく取引に入っていけるよう、UIやUXの質を高めることが必要だと考えます。そしてこの点でも、NTTドコモやイオン銀行とタッグを組む意味があります。

通信業と小売流通業ですから、金融や資産運用のことをあまり知らない個人に寄り添って、UIやUXの質を向上する取組みが実現できると考えています。

加えて、私どもは長年、投資教育に力を入れており、対面やオンラインでのセミナーも年200回程度開催していますし、「マネクリ」というオウンドメディアも運営しています。今後は日々のニュースと投資を結び付けて解説するようなコンテンツも増やし、よりいっそう投資に対する理解を深められるようなコンテンツも提供していく予定です。

――ただ、初心者の方などを取り込みながら口座数が増えることは喜ばしい一方で、そうした方たちの多くは低コストのインデックスファンドから投資を始める可能性が高いと思います。収益確保の見通しはどうですか。

私どもはお客様と20年、30年という長期にわたる関係を築きたいと常々考えています。短期的に“回収”するという考えはありません。

最初は低コストファンドから入られたお客様でも、お取引が長くなると、他の金融商品にも目が行くようになります。すると、徐々に例えば高配当銘柄やアクティブファンドなどを加えることで、リッチなポートフォリオを構築するようになるのです。お客様が他の金融商品にも目を向け始めた時、そのニーズにしっかり合致した金融商品を提供できるようにすることが肝心だと考えています。

マーケティングについても、従来はとにかく大勢の方にアピールして、マネックス証券を知っていただくことが最大のプロモーションでしたが、NTTドコモはデータ分析に強みがあるので、ターゲットを絞ったマーケティングも可能になるでしょう。

こうしたことを組み合わせることによって、収益は十分に確保できると考えています。

――インタビューの中で“予告”くださった数々のサービスのローンチ、そしてきっと来年も提携のなかから新たなサービスを仕掛けられていくのだと思うと、今後もいっそう楽しみです。ありがとうございました