資材価格や人件費の高騰、歴史的な低金利環境などを背景に、全国的に住宅価格が上昇しています。昨今では購入後の価格上昇を期待して住み替えを前提に自宅を購入する戦略などにも注目が集まっていますが世間全体での実態や意識はどうなっているのでしょうか。
高額化してきている「住まいの状況」に対して、どのような「住み替えの選択」がなされているのか、ミライ研で実施したアンケート調査をもとに3回のコラムでお伝えします。
「住み替え」の調査について
現在の住居形態が、「賃貸」・「持ち家(自己所有)」の方に、過去3年以内に住み替えたか(実態面)と、今後3年以内に住み替えたいのか(意識面)、両側面から尋ねることで、過去・現在・未来の時系列で住まいをどのように選択しているかを把握できる形で調査を行いました【図表1】。
その中でも本コラムの1本目では、過去3年以内から現在までの住み替えにおける実態面について解説していきたいと思います。
【図表1】住み替えの選択に関する時系列調査の概要
(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
*過去・未来における「持ち家」については、自己所有のみに限らない
20代では2人に1人が住み替えを行っている
過去3年以内に「住み替えを行った」割合を各年代で見ると、18歳~29歳(以降20代と表記)では就職や転勤などを背景に全体の半数以上(51.7%)、およそ2人に1人が3年以内に住み替えを行っていることがわかりました【図表2】。また、一般的にライフイベントが多く訪れるといわれる30代で約4割、40代で約3割の方が過去3年以内に住み替えを行っています。一方で、50代・60代はともに住み替えしたのは約1.5割と、住み替え比率が減少していることが確認できました。
【図表2】年代別 過去3年以内の住み替え実態
*回答者:現在「持ち家(自己所有)」、「賃貸」の居住者
(出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)よりミライ研作成
住み替えをした方に絞って、住居形態の変化も調査しました【図表3】。結果をみると、年代によって傾向が大きく変わり、20代では住み替えた方の9割近く(85.8%)が「賃貸への住み替え」、約1割(14.2%)が「持ち家」へ住み替えているという結果が確認できました(「持ち家→賃貸」や「持ち家→別の持ち家」については、実家からの住み替えも含む)。
【図表3】年代別 住居形態の変化(ベース:過去3年間に住み替えあり)
*回答者:現在「持ち家(自己所有)」、「賃貸」の居住者 *5.0%未満はグラフ内表記省略