新中計を発表 3年で6000億円を投資、累進的な増配&自社株買い方針も導入

最後に経営方針を押さえておきましょう。新たに公表された計画では、投資計画の拡大と株主還元の強化などが示されています。

双日は2024年5月、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画(中計2026)を公表しました。今期(2025年3月期)はその初年度にあたります。

中計2026では累計で6000億円の投資を実行します。うち3000億円は「S投資」とし、既存領域の強化に振り向けます。残り3000億円は「X投資」とし、事業ポートフォリオの変革に投じる計画です。期間中における投資収益の貢献は、S投資のみで累計240億円(純利益)を見込みます。収益性の向上は、前中計までの投資も貢献する想定です。

【双日の中期経営計画の主な目標(2025年3月期~2027年3月期)】
・累計投資額:6000億円超(4477億円)
・平均ROE:12.0%超(12.6%)
・平均純利益:1200億円超(981億円)
※()は2022年3月期~2024年3月期の実績

出所:双日 中期経営計画

新中計では株主還元の方針も更新されました。従来は配当性向30%を基本としていたところ、株主資本DOE(※)4.5%を基本方針としています。利益が積み上がることで原資となる株主資本が増加し、一定の配当率でも累進的な増配となる仕組みです。

※DOE(Dividend on equity ratio):株主資本配当率のこと。株主資本に対する配当金の割合

さらに3カ年の累計基礎的営業キャッシュフローの3割程度を株主還元に充てる方針も示されました。キャッシュの収支に対し配当が見劣りする場合、差額は自社株買いで対応することが見込まれます。

実質的に累進配当を導入したこと、キャッシュフローベースの還元方針に対する不足分は自社株買いで補完する方針が明確化されたことから、双日の株主還元は強化されたといえそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)