金融環境:財政悪化が進むリスク 日銀正常化の不確実要因に

米国の景気悪化懸念が後退する中、日銀が早期に追加利上げに動くとの見方が広がっています。足元の円安進行も利上げ観測の高まりに寄与しています。他方、財政悪化リスクが日銀の政策正常化の不確実要因として浮上しています。

年央の政府試算では、2025年度のプライマリーバランス(PB*)は+0.8兆円と、わずかながらも黒字転換との見通しでした。しかし、政府は昨年度の13兆円規模を超える補正予算を検討しています。昨年度補正予算は8.8兆円の国債増発(財源の7割程度)を伴い、資金調達は次年度にずれ込みました。今年度補正予算も同様に次年度の財政悪化要因になるとみられ、2025年度のPB黒字化達成は難しくなる見通しです。

日銀の利上げで金利が上昇する中、この先は国債費増加による財政悪化が予想されます(下図下段)。加えて、現与党が10月の総選挙で議席過半数割れとなったことから、財政拡張を求める協力政党の意向が政策に反映されやすくなり、今後は財政悪化ペースが加速する可能性があります。

財政悪化は国債需給を悪化させ、長期金利の上昇圧力となります。日銀は金融環境にストレスがかからない程度の利上げは可能との見方を示していますが、長期金利の上昇が利上げ効果を上回り金融環境が引き締まる場合、利上げの最終到達点が切り下がる可能性があります。また、日銀の国債保有の削減も、国債需給悪化の場合は継続が困難になると見られます。今後、日銀の政策正常化を進めるためには、財政健全化への取り組みが平行して行われる必要があると考えられます。

(*プライマリーバランス(PB)=社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収等で賄えているか どうかを示す指標)

 

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