第二次トランプ政権と米国
トランプ再任の期待と不安 経済への影響は?
米大統領選挙以降、金融市場は大きく動いています。株式市場はトランプ氏の大統領再任を好感し大幅上昇となりましたが、リスク要因もあり、先行きには警戒感も出ています。
市場が期待しているのは、トランプ氏が掲げる減税案です(図①)。トランプ政権1期目に成立した「トランプ減税」のうち、2025年末に期限切れとなるものを恒久化し、法人減税など追加減税も同時に行うというものです。他方、景気下振れ要因として懸念されるのは、関税引き上げや移民の抑制です。
米超党派シンクタンクのTax Foundationは、トランプ氏の減税案が実現した場合、米国では長期的な実質GDP水準が2.4%切り上がり、長期的な雇用者数が200万人超増加すると試算しています。一方、関税引き上げは景気下押しとなり、長期実質GDPを1.3%押し下げ、長期雇用者数を100万人超減らすとの試算を示しています。海外の報復措置を想定すると、下押し効果はさらに拡大すると見られます。ただ、減税と関税引き上げの効果はネットではプラスで、景気・雇用を押し上げると推計されています(図①) 。
この試算では問題点も示されています。そのうちの一つが社会の分断が深刻化する可能性です。高所得層は減税の恩恵で10年後の所得が上振れる一方、低所得層は関税引き上げの悪影響が上回り、所得は下振れすると推計されています(図②)。トランプ氏の政策は、米国全体への経済効果はプラスと見られますが、社会の不均衡が拡大する場合、長期的に見れば米国の成長力を抑圧し、経済を不安定化させる可能性があります。