自公政権下で停滞した政策が大きく前進する可能性

10月27日の日本の衆議院選挙で自公連立政権は215議席と過半数の233を下回った。法案を成立させるには28議席の国民民主党や38議席の日本維新の会の協力が不可欠だ。従来の常識なら、政治が不安定化することで、将来の予見可能性が低下して経済にも下押し圧力がかかる。しかし、これまでの自公政権の政策実現の実績を踏まえれば、真逆となる可能性がある。議席数のバランスからして自公は、国民や維新の政策をほぼ丸呑みしなければならない可能性が高いからだ。

昔の与野党対決の時代なら、野党は政策として実現の可能性が低い要求ばかりしていた。しかし、今の国民や維新の公約には、自公政権が避けてきた改革を進める内容が多く含まれている。しかも両党の政策は、維新・馬場代表曰く「9割ぐらい」は重なっている。両党の要求を聞き入れることで、自公政権下で停滞していた政策が前進する可能性が出てきたのだ。

一部では政策の大きなブレークスルーになるという見方も出ている。

 

自公政権が解決を避けた改革

選挙でも争点となった国民の関心が高い改革案として以下があげられる。第一に、政治と金の問題だ。国民民主党や日本維新の会の要求を聞き入れることで、与野党で一応の決着を付ける可能性が高い。ここが済まない事には、国民の関心が最も高い社会保障改革に着手できない。社会保障改革では自公政権が放置した積年の問題である世代会計に着手することになるだろう。維新は世代会計により、生まれた世代で社会保障を通じる不公平が1つの推計として6300万円もあると主張する。高齢層は受け取り超過だが、若年層は支払い超過で大きな損失を被るのだ。国民と維新は、政治と金の問題解決を前提に、補正予算の内容へと進むだろう。第二に、補正予算で計上が見込まれる電気代、ガス代、ガソリン代補助の支払い方法だ。自公政権は業者向け補助金を好んだ。その補助金が全額国民に本当に渡っているのかについて、疑念視する根強い見方があるにもかかわらずだ。ここは国民や維新の要求を聞き入れて、直接消費者に渡るように仕組みを変えるべきだろう。第三に、国民も維新も政策的に優先する年収の壁の改善だ。自公政権では何年たっても実体として解決しなかった。これが賃上げにもかかわらず労働時間を減らすことで、賃上げの効果を打ち消すだけでなく、日本経済の押し下げ原因になっていた。第四に米価だ。今年の米価の上昇に対し、自公政権は解決策を示せていない。しかも数千億円規模の予算をつぎ込んで減反が実質的に維持されている。維新は生産量1.5倍を公約としている。米やパックご飯は海外で人気が高く、輸出が追い付かないほどだ。食料安全保障を大きく改善するコメの生産増加と輸出にこそ、補助金をつぎ込んででも進めるべきだろう。第五に原発だ。10月29日の女川原発再稼働など進んではいるが、いかにも遅い。原発再稼働に前向きな国民と維新に突き上げられて、自公は原発再稼働を加速させるべきだろう。早ければ年度内が見込まれる次期エネルギー基本計画に反映されるべきだろう。

 

来年7月の参議院選挙までの選挙管理内閣

自公は衆議院で過半数を割っている。野党が団結すれば内閣不信任案が成立する。常にこのリスクがある不安定な状態だ。しかし、参議院では自公は過半数を維持している。この意味合いは、野党は内閣不信任案を仮に成立させたとしても、その後の展望がないのだ。

政策の以前に自民党内で石破下ろしが始まるという見立てはある。しかし、この状況で石破総理を引きずり下ろし、自民党総裁に積極的に立候補する候補は多くはないだろう。国民や維新との連携を進めるには、森山幹事長、菅副総裁、坂本国対委員長(旧森山派)、新生党と新進党に所属した過去のある石破総理ら現執行部には、一日の長があると見られる。

つまり、与野党双方にとって、来年7月の参議院選挙または一部で取りざたされる衆参同日選挙までは、政策を推し進めて国民にアピールして理解を得る選挙管理内閣にならざるを得ない可能性が高い。

この微妙な情勢は、日本経済、そして日本株にとって天の配剤になる可能性がある(脱稿10月30日)。

 

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