少し前に、米国で利下げが実施されました。米国の経済規模は世界最大で、ドルは基軸通貨と呼ばれる世界経済を支えるシステムなので、ドルの利下げは世界経済に大きな影響を与えると思われます。「でも私にはどう関係がある?」と思う人もいるかもしれませんが、米国の利下げは円/ドル相場を通じて、日本の物価を押し下げる要因になります。今回は、米国の利下げが消費者にどのように影響するのかについて、解説します。

 

米国で利下げスタート、日本の消費者へ恩恵が及ぶのは半年後以降か

9月18日に米国の中央銀行に相当するFRBは0.5%の利下げを実施しました。直前まで利下げ幅が0.25%か0.5%か見方が割れていましたが、金融市場は波乱なく相場材料として消化しました。

利下げ後の米国の政策金利は4.75~5.0%、中心値は4.875%です。記者会見でFRBのパウエル議長は今後も連続的な利下げを続ける意向を示しました。

利下げに踏み切った背景は二つあります。一つはインフレの鎮静化です。2022年8月に最も高い9.1%まで上がった前年比の消費者物価指数は今年8月には2.8%まで低下しました。もう一つは景気の軟化です。失業率は23年前半の3.4%からはやや大きく上がり、今年の8月には4.2%まで上昇しました。

米国では金利水準が高い状況が長く続いたがゆえに、住宅ローンや自動車ローンを組めない人が増加していました。これが販売不振を通じて景気を押し下げる要因になっていました。販売が不振だと価格も下がりやすくなります。利下げはこの流れに逆回転のベクトルを加えることを意味します。今後は、金利低下がどの程度、住宅や自動車の購入を刺激するかがポイントです。市場では1年以内にさらに約2%の利下げが織り込まれています。

利下げは恩恵を受けるセクターにとって追い風となります。代表例は米国の不動産信託(リート)です。最近は金利低下の恩恵を受けて価格が上昇傾向となっています。米国に追随して多くの新興国も利下げサイクルに入る可能性が高いと見られています。

日本も米国の利下げの影響を受けます。日米金利差の縮小を通じて円高要因になります。足元の円相場は140円前後で推移しています。5月ごろには160円台でしたからかなり円高に振れました。円高は輸入品の価格低下を通じて日本の物価を押し下げる要因になります。ただ消費者にその恩恵が及ぶのは経験則では6~9カ月後になりそうです。

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