庶民にとって負担の大きい物価高。衆議院選挙でも、物価高が争点となっていました。物価高は日本だけではなく世界中で起きていて、11月の米国大統領選挙でも、大統領候補者は物価鎮静化と賃上げに向けた政策を競うように打ち出しています。そこで今回は、物価上昇と賃上げについて解説します。
物価目標2%は妥当? 民間企業が実現すべき生産性(実質賃上げ)とは
物価高は世界中で選挙の争点になっています。今年は多くの国で選挙が実施されたことから選挙イヤーと呼ばれています。これまでの選挙結果は、総じて政権与党に厳しいものとなっています。物価高に対し程度の差こそあれ庶民の反発は強くあったと思います。
日本も例外ではありません。物価と賃金が選挙の争点となり、各党は公約を打ち出しています。自民党は「物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済の実現を目指します」としています。立憲民主党の公約では、「新しい金融政策」への転換として、日銀の物価安定目標を現在の「2%」から「0%超」へと変更する政策を打ち出しています。ほかにも公明党と国民民主党は物価を上回る賃上げを公約としています。ただ、公務員を除くと賃金は政府が支払うものではありません。民間企業が支払うものですので、実現は難しいのが現実です。
賃金が上がりにくいのなら物価を下げようとするのが立憲民主党の公約です。政府・日銀が定める物価目標2%に対し、0%超を打ち出しています。実は日本銀行の物価目標は今でこそ2%ですが、かつては違いました。日銀は物価安定の「理解」として0%や「目途」として1%を打ち出された時期があったのです。ただ現在は2%を「目標」としています。これは世界中の先進国の中央銀行の目標とほぼ同じです。いわば世界標準と合わせたのです。
では、日銀の物価目標2%は妥当なのでしょうか。日銀が理解や目途という言葉で0%や1%を目指した時期にはデフレになった時期がありました。デフレは失業を伴い不況になる場合が多いため、物価目標は少し高めの方が良いとされています。
元々自民党が打ち出した方向性は、賃上げ率3%、物価上昇率2%、両者の差の1%が実質的な賃上げでした。この部分は生産性と呼ばれ、創意工夫による効率性の向上分です。生産性の上昇は、政府に与えられるものではなく、創意工夫により民間企業が実現すべきものなのです。
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