日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行は結局何をしているのか
日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行も、信託業務を営む金融機関のひとつですが、この2行が他の金融機関と異なるのは、その業務内容が資産管理に特化されていることです。
といっても、この2行自身の資産を管理・運用しているのではなく、投資信託会社や年金基金、保険会社、さらには私たちの公的年金の一部を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)といった機関投資家の資金を管理することに特化した信託銀行です。
日本マスタートラスト信託銀行の管理資産残高は、2024年3月末時点で703.7兆円、日本カストディ銀行は683.8兆円というように巨額です。
これでお分かりいただけたかと思いますが、日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行の裏側には巨大機関投資家がおり、その巨大機関投資家が行う資金運用を通じて、さまざまな企業の株式に投資するため、大株主の上位にこれらの銀行名が上がってくるのです。
ちなみに、信託口を通じて投資された株式の名義は、実際に運用資金を信託している機関投資家のものではなく、日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行の名義になっています。
そのため、実際にどの機関投資家が、その企業に投資しているのかを個別に知ることはできません。企業が本決算の後で発行する有価証券報告書も同様に記載されていません。
ある程度、細かく把握したいのであれば、大量保有報告書を過去にさかのぼってみていくしかありません。大量保有報告書とは、発行済株式数の5%を超えて保有した場合、これを提出することによって、大量保有していることを開示するための書類です。また報告してから1%以上増減した場合は変更報告書を提出しなければならないため、その過程を追いかけていけば、「信託口」という陰に隠れている大株主を、おおまかにではありますが、あぶり出すことができるはずです。
なお大量保有報告書や変更報告書は、金融庁のEDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)にアクセスすれば、誰でも無料で必要書類を見ることができます。