値上げ奏功でV字回復 ただし今期は大幅な減益 原因は?
次に業績を振り返りましょう。直近10期では2020年3月期と2021年3月期に最終赤字となっています。
2020年3月期の赤字は事業用資産の減損が主因です。採算の悪い国内の製鉄所の価値を見直した結果、資産の大幅な取り崩しが生じました。翌2021年3月期は、コロナ禍で需要の低迷から大幅な減収となる中、営業利益までは黒字を確保したものの、金融費用や税費用などから最終損失となっています。
以降は大きく回復しています。住友金属工業との統合後で、売り上げは2024年3月期まで3期連続、純利益は2023年3月期まで2期連続で過去最高を更新しました。なお、2024年3月期の減益は在庫評価損益の悪化が主因です。
業績を押し上げたのは販売価格の上昇です。鋼材の出荷量は減少傾向にありますが、下記のグラフから販売価格は2022年3月期以降で上昇していることがわかります。日本製鉄はひも付き価格の値上げに取り組んでおり、数量の低迷をカバーしています。
ただし、今期(2025年3月期)は減収減益、特に利益は大きめの減少を予想します。利益は事業撤退損や設備休止関連費用などが圧迫する想定です。
なお、通期の業績予想は第1四半期決算で上方修正されたものの、第2四半期では下方修正されています。結果、期首予想比で売上収益は2000億円の引き下げ、事業利益と純利益はそれぞれ200億円、100億円の引き上げとなりました。
第2四半期の下方修正は在庫評価差や原料事業の悪化、生産出荷の減少などが反映されました。うち在庫評価差と原料事業は、第1四半期では上方修正されていました。しかし第2四半期の引き下げが大きく、通算では期首時点の予想より悪化しています。なお、鋼材マージン(原料費と販売価格の差)の予想は2四半期連続で改善しています。
【日本製鉄の業績予想(2025年3月期)】
・売上収益: 8兆6000億円(-3.0%)
・事業利益: 6700億円(-23.0%)
・純利益: 3100億円(-43.6%)
※同第2四半期時点における同社の予想
※()は前期比
出所:日本製鉄 決算短信
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