こちらは今回の選挙で「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」というアメリカの財政赤字を心配する元議員らが超党派で作る委員会が発表したレポートで、今後の財政赤字がどうなるかを試算したものになります。
トランプ大統領になった際のシナリオを見てみましょう。減税が延長されるので、政府の歳出は10兆ドル増える。しかし、トランプ大統領は関税をまた引き上げると言っている。そして利払いも増える。その結果、財政赤字は差し引きで7兆5000億ドル増になる。そして2035年までに累積債務残高はGDP比142%に上がる。つまり、選挙後の10年で財政赤字は現在の数値から22%ほど増える。そんな試算です。
一方のハリスは児童扶養税額控除を拡充すると言っています。つまりトランプ同様減税すると言っている。その結果、増える歳出は7兆2500億ドルです。ただ、法人税をかけ、国の儲かっている企業から税を徴収するとも言っています。その結果、歳入は4兆2500億ドル増になる。また、利払い費も5000億ドル増になるので、財政赤字は差し引き3兆5000億ドル増になる。ということで、財政赤字はトランプ大統領になった場合の半分ほどで済む。それでも2035年には累積債務残高はGDP比で133%に上昇する。
どちらの政党も財政赤字がどんどん増える形です。
実はもともと、共和党は小さな政府、つまり財政赤字は増えない仕組みを目指す。対する民主党が政権を握ると社会福祉にお金をかけ、財政赤字が増える。こういった考え方が社会通念だったわけですが、いまは全く違う。
付け加えると、昔と異なり、「歳出は増えるが、歳入もこれだけ増える」そのようなバランス型で政策が行われていることもわかります。
この流れも紐解くと行き着くのは金融危機です。金融危機当時はつぶれそうな金融機関への公的資金注入を巡って、議論が紛糾しました。
そして金融危機の後の大統領選挙は、イメージの対決という側面はあるものの、お金をどう使うか、その争いという側面が強くなっていった。そう感じています。