今年1月から始まった新NISA。PayPay証券が、その口座数を目覚ましい勢いで伸ばしていると注目を浴びている。

SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券の5社が「5大インターネット証券」「ネット証券主要5社」と長らく呼ばれてきたが、NISA口座数でいえば、その一角に食い込む勢いだ※1。しかも特徴的なのは、NISA口座のうち新たにNISA口座を開設したユーザーの割合が95%以上、つまり「投資デビュー組」からあつい支持を受けている点だ。

新NISA開始で強さを発揮している理由、これから先の成長ストーリーをどのように描いているのか――代表取締役社長執行役員CEOの番所健児氏に話を聞いた。

※1 楽天証券、SBI証券、auカブコム証券の3社は、決算資料にてNISA口座数が確認できる。それによれば、2024年6月時点で、楽天証券は552万口座、SBI証券は504万口座、 auカブコム証券は27.6万口座。PayPay証券は同時点で30.6万口座。
さらに総合口座数で見ると、2024年6月時点で、SBI証券(SBIネオトレード証券、FOLIOを含む)は1293.6万口座、楽天証券は1133万口座、マネックス証券は262.7万口座で、auカブコム証券は173.1万口座、松井証券は157.4万口座であるなか、PayPay証券は117.7万口座である。

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――PayPay証券の歩みの始まりは、2016年にサービスを開始した日本初のスマホ証券「One Tap BUY」からだと思います。その頃から今までを振り返って、大きかったといえる出来事は何でしょうか。

番所氏(以下、番所) 一番大きかったのは、商号を「One Tap BUY」から「PayPay証券」に変更したことだと思います。

One Tap BUYは2016年前後のフィンテックブームの中で誕生しました。誰でも手軽に資産運用できる環境を提供するため、最低取引単位を1単元ではなく1000円にするなど非常にユニークなサービスを提供してきました。

こうしたなかで2021年にPayPay証券に商号変更をしたのですが、ソフトバンクグループの金融事業として、キャッシュレス決済アプリPayPayを中心に金融のエコシステムをつくっていく――その一翼を担うという意味において、商号変更は自然の流れでしたし、PayPayの認知度は非常に高く、ユーザーの満足度も高いので、われわれのブランド戦略において、有利に働いています。

番所健児氏

――2024年からNISA口座への対応を始めたことも、大きかったのではないでしょうか。

番所 確かにそうですね。One Tap BUYは1000円から株式に投資できる小口取引をウリにしていたのですが、これだと旧制度のNISAでは対応していなかったため、NISA口座への対応は見送ってきました。

しかし、NISAの制度見直しが行われた結果、生涯非課税枠が1800万円に引き上げられたことで、誰もが証券口座を持つ世の中になると判断しました。これがNISA口座の開設に対応した一番の理由です。

また、「PayPay資産運用※2」を立ち上げるなど、PayPayとの連携を強めていくなかで、株式の売買といったフロー取引を中心としたビジネスモデルではなく、投資信託の「長期」・「分散」・「積み立て」を前提としたユーザーと長期的な関係を築いていくことを指向するようになりました。こうした関係を構築していくうえで、やはりユーザーの長期的な資産形成に資するサービスは重要なので、それもNISA口座の開設に対応した理由のひとつです。

※2 PayPayアプリ内でシームレスに証券口座の開設や資産運用ができるミニアプリ。