――インターネット証券業界全体に目を移すと、証券会社の背後には「ポイント経済圏」があって、その経済圏でしのぎを削る、といった様相を呈しています。多くの経済圏がひしめくなかで、「PayPay経済圏」に属していることのメリットは何ですか。

番所 確かに証券会社単体で戦う時代ではなく、サービスの総合力で戦っていく時代だと思います。

そして、PayPay経済圏は証券サービスを展開するうえで、“一丁目一番地”を押さえている点が強みだと考えています。

PayPayが提供しているのはなんといっても「キャッシュレス決済サービス」。プラットフォーマーとしての強さがあると考えています。多くの人が毎日使っていて、日常生活に溶け込んでいます。

そうした決済インフラに証券ビジネスを乗せれば、これまで投資とは無縁の生活をしてきた人に対して、非常に親和性の高いサービスを提供できると思います。

――今年1月からスタートしたばかりにもかかわらず、NISA口座数が大手インターネット証券会社の一角に食い込んできています。好調の背景をどう考えていますか。

番所 やはり初心者でも分かりやすく口座を開設でき、投資信託を購入できる点が評価されているのだと思います。もっといえば、既存のインターネット証券会社ですくいきれていなかったニーズに応えられたためだと考えています。

たとえば口座開設の申請に要する時間は、すでにPayPayアプリで本人確認を完了していれば、およそ3分です。投資の知識がなくても、簡単な手続きで口座を開設でき、その後どう投信を購入すればいいのか、できるだけ迷わないように工夫してきた点が評価されたのだと見ています。

――これまで投資に二の足を踏んできた人に寄り添うことは「貯蓄から投資へ」の流れで見れば、マッチしていると思います。一方で、そうしたユーザーの多くはおそらく低コストインデックスファンドの少額積立投資を選択するでしょう。その結果、 “薄利多売”のビジネスに陥らざるをえないのではないかと思います。実際、ディスクロージャー資料によれば赤字が続いていますが、黒字化の見通しをどのように考えていますか。

番所 私たちのビジネスモデルが、既存の証券会社とは一線を画していることをあらためて伝えたいと思います。株式の売買手数料、投資信託の購入時手数料、信用取引の金利収入といったフロー性収益には依存せず、あくまでも投資信託の残高を積み上げることで得られるストック性収益の増加を重視しています。そして、そのためにはお客さまとの長期的な関係を構築することが大事です。

一方、コストについては最小限に抑える努力をしています。店舗は構えていませんし、PayPayアプリ上からの送客もあることからマーケティング費用も抑えられています。システムは内製なので、その点でも運用コストは抑えられていると思います。

ここまでサービス開発に専念してきたので、その開発コストが先行してきましたが、数年以内の黒字転換も見えてきています。ここから先は、スケールメリットが収益面にも反映されてくると考えています。

――NISAがスタンダードな存在になる流れで、今後どのようなサービスを展開されていくのか引き続き注目したいと思います。ありがとうございました。