「金利のある世界」では迅速で柔軟な対応が不可欠に

足元ではデジタルの活用を強化するりそな銀行だが、やはりその最大の強みが対面でのコンサルティングにあるのは言うまでもない。特に富裕層に対しては、2020年ごろから総資産管理型営業に取り組んできた。「投資商品の販売一本やりからの脱却を目指し、不動産仲介や事業承継、アパートマンションローンといった幅広い収益の確保に成功しています」と相澤氏は話す(図参照)。それはまた、フルラインの信託機能を備えた日本で唯一の商業銀行である、りそな銀行ならではの取り組みでもある。

 

 
 

従来はそうした総資産管理型営業もライフデザインサポート部の所管だったが、今回の組織変更に伴い、「企業オーナーや地主といった富裕層に対する渉外中心の提案は、法人・プレミア戦略部や承継ソリューション営業部が受け持つ体制になりました」と相澤氏。

その狙いは多様化、高度化する富裕層のニーズに応えるため、さらに専門性を高めることにあるが、次のステージとして富裕層向けのプロダクトの充実も図っていくという。今年6月には、りそな銀行のコア商品となってきたりそなファンドラップに「資産承継特約」を追加。運用資産を換金することなく次世代に承継できるようになったが、これも富裕層を意識した商品の1つと言えるだろう。

一方のマスリテール層に対しては、店頭販売力の強化に加え、リモートチャネルのサポートにより、従来以上のフォロー体制を構築し、これまで出会えていない新たな顧客層へのアプローチを増やしていく。また、「金利のある世界」となったことで、「預金、資産運用、ローンなどに対するお客さまの考え、指向が大きく変化する可能性がある」と相澤氏は指摘する。「だからこそ、スピード感を持ちつつ柔軟な施策を打ち出せるよう、準備を整えているところです。特にデジタルでのお客さまとの接点については、完成形はないと認識していますから、試行錯誤を積み重ねながら一層の高度化を図っていきたいですね」

***

りそなホールディングスはこの7月に、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ「B.LEAGUE」のタイトルパートナーに就任。10月から始まる新シーズンは「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25SEASON」となり、これまであまり接点がなかった層や地域への認知拡大を目指す。りそなグループでは公的資金の注入以降、大々的な露出は控えてきたが、2016年に公的資金を完済したことで、いよいよ本格的な攻勢に乗り出したわけだ。

りそな銀行が目指す、リテールビジネスの在り方とはどのようなものか。「私たちはお客さまの人生に寄り添い、伴走することを目標にしています。資産運用提案は、お客さまの人生に数多くある困り事の解決策の1つにすぎず、ゴールではありません。その他の困り事も解決しつつ、お客さまの人生を豊かにするのが私たちの使命です。それがLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上へとつながり、あくまで結果として、収益もついてくるのだと捉えています」(相澤氏)。

再び「金利のある世界」となり、メガバンクなどにもリテール回帰の動きも見られる今、「リテールNo.1」を掲げてきたりそな銀行の真価が問われる時でもあるのだろう。