◆タイミングを計って投資する手法は難しい状況

広島銀行でネット販売の売れ筋トップになった「日本トレンド・セレクト」は、株式市場全体の値動きの2倍相当で動くブル型の「ハイバー・トレンド」と、市場の動きと反対に動くベア型の「リバース・トレンド・オープン」、そして、資金を一時的に置いておく「マネーポートフォリオ」の3つのコースがあるファンドで、投資家の相場観によって「株価が上昇しそう」と思った場合は「ハイパー・トレンド」、反対に「株価が下落しそう」と思った場合は「リバース・トレンド・オープン」、また、「どっちに動くのかよくわからないので様子を見たい」という場合は「マネーポートフォリオ」を購入するという使い方が想定されている。

7月は、国内株価は11日まで史上最高値を更新する上昇相場で、その後、株価が調整して下落していたため、株価の再上昇を狙った「押し目買い」が優勢となり「ハイパー・トレンド」の方に人気が高い状況だったのだろう。ただ、8月になると国内株価は大幅な下落となった。7月末時点に対し、8月5日時点では「ハイパー・トレンド」はマイナス38%、「リバース・トレンド・オープン」はプラス21.82%だった。その後は、株価が切り返したため、「ハイパー・トレンド」が急上昇し、「リバース・トレンド・オープン」は急落するという逆転が起こった。株価のボラティリティ(変動率)が大きくなっているだけに、株価の先行きを見越してタイミングを計って投資する投資手法は、非常に難しくなっている。

◆市場の波乱で期待される店頭のアドバイス力

地方銀行の投信販売実績で、ネット販売では株式インデックスファンドが売れ筋の上位を占め、店頭販売ではバランス型やアクティブファンドが売れ筋上位に入ってくるのは、健全なすみ分けがあるように感じられる。ある程度の投資経験があり、自己判断で低コストの投資がしたいと考える投資家は、インターネットチャネルを使って自分の好きな投資対象を選ぶ。中には、ブル型やベア型といったリスク水準の高い商品にもトライする場合もあるだろう。

一方、投資初心者など投資に慣れていない投資家は、店頭で販売員のアドバイスを聞きながら投資を進めるということが多いだろう。店頭ではバランス型やREITファンド、あるいは、債券ファンドなども売れ筋上位に入ってくる。この場合、バランス型などは単独で販売されているのだろうが、REITファンドや債券ファンドは株式ファンドなどとの組み合わせで提案されるケースも少なくないと考えられる。店頭の相談員に求められるのは、投資家に過度なリスクをとらないようにアドバイスする力だろう。「投資に踏み切る」という場合、「大きなリターンを得たい」という誘惑が強くなるが、「大きなリターン」には「大きなリスク」がついてくることをしっかり説明し理解を得ることが大事だ。

そして、リスクを抑える「分散投資」の考え方を伝えることも、店頭販売員の重要な役割と言える。地方銀行の販売額順位で、さまざまな資産クラスの商品がランキング上位にあがっているのは、そのような分散投資のアドバイスが行き届いている結果とみえる。特に、8月になって世界的に株式市場が不安定となっており、銀行の窓口への相談も増えることだろう。「長期投資」と「分散投資」のアドバイスがていねいに行われることが期待される。

執筆/ライター・記者 徳永 浩