◆メガで必ず売れ筋の一角を占めるバランス型ファンドの価値

メガバンクの売れ筋ランキングには、常にバランス型ファンドが上位にランクインしてきた。株式市場など特定市場の好不調の影響を受けにくくし、安定的な収益の獲得をめざすことがバランス型ファンドの狙いだ。8月に起こった株価の急落場面等でその下落にあらがって資産価値を保つ機能が期待される。

みずほ銀行の売れ筋トップになっている「ピクテ・プレミアム・アセット・アロケーション・ファンド」は、7月の月間騰落率がマイナス1.76%だった。これは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のマイナス5.35%や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のマイナス6.10%よりも軽微。そして、7月末時点から8月7日に付けた安値までマイナス3.65%であり、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のマイナス9.35%や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のマイナス9.25%、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」のマイナス19.54%などよりもはるかに低い下落率に抑えられている。このファンドは、国内外の株式、債券、REIT(不動産投資信託)に加え、金(ゴールド)やコモディティなどにも幅広く分散投資している。

三菱UFJ銀行の売れ筋ランキング第3位の「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」は8月上旬の安値までの下落率が5.84%、三井住友銀行のランキング第7位に入っている「ライフ・ジャーニー(かしこく育てるコース)<最高の人生の描き方>」の同下落率は7.25%だった。「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」は金などコモディティも投資対象にしているが、「ライフ・ジャーニー(かしこく育てるコース)<最高の人生の描き方>」はコモディティを投資対象にしていない。8月に金価格が上昇した効果を取り込めたかどうかがパフォーマンスに影響していると考えられる。

これらバランス型ファンドは、大きなリターンをめざすファンドではない。過去3年のトータルリターンを比較しても、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の年率17.36%、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の同21.18%などと比較すると、年率6%~9%程度のリターンになり、明らかにパフォーマンスでは見劣りする。ただ、株価が急落するような局面では、下落率が抑えられ資産価値が守られるというメリットがある。中長期の資産形成には投資を継続することが大前提であり、安定的な値動きのファンドの方が投資を継続する上で適しているという考え方もある。20年、30年という投資期間には、この8月上旬に経験したような、短期間での大きな価格変動もある。改めてバランス型ファンドの価値を考えたい。

◆景気の曲がり角を迎え、必要とされる資産運用の「コーチ」

今後を展望すると、米国の景気の行方によって米国の株式市場、そして、ドル円の動きが影響してくる。これまで、米国のハイテク株式を中心にしてメガバンクの売れ筋は、外国株式に偏った資産構成になってきた。「米国株安」、また、「ドル安・円高」は、外国株式を主要な投資対象としたファンドにとっては資産価値に大きなダメージを与える要素になる。米国経済が失速し深い景気後退に陥るようなことになると、米国で急速な利下げが起こり、それが日米の金利差の縮小となってドル安・円高の引き金となることは想定されるシナリオの1つだ。

8月上旬の株安局面にあって、7月末比でS&P500はマイナス6.8%だったが、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」はマイナス9.25%になった。このように、ドル安・円高によってファンドの下落率が増幅されるということが起こる。バランス型ファンドの活用も含め、債券ファンドなど多様な資産クラスを活用することも考えたい。

メガバンクなどにおいては、資産運用のコンサルタントが顧客の運用ニーズに応じて適切な運用アドバイスを行うことができる。ちょうど閉幕したパリオリンピックでも、活躍する選手には常にコーチの姿があり、選手に寄り添っていた。オリンピックでみられたような選手とコーチの関係のように投資家に寄り添う運用アドバイザーの存在が重要だ。景気の曲がり角を迎えているだけに、迷いを抱えた投資家も少なくないだろう。このような時にこそ、適切なアドバイスを得られる相談相手が求められている。