「ドリコレ」をベース資産にしたポートフォリオ運用を提案
では、「いちよし基準」によって顧客のためにならない商品を販売しない方針を貫くいちよし証券は、どのような商品を顧客に提案しているのだろうか。
根幹にあるのは、ローリスクのベース資産と、ハイリスクのアクティブ資産との組み合わせだ。かつては先進国債券ファンドをベース資産、グローバル株式ファンドをアクティブ資産とする組み合わせを提案していたが、今はファンドラップである「ドリーム・コレクション」をベース資産として、顧客の運用目的やリスク許容度に応じ、国内外株式、国内外債券、国内外REITの他、ヘッジファンドやコモディティファンドなどさまざまな資産に分散した、5つの運用モデルを選べるようになっている。
なお、ドリーム・コレクションは今年1月からの新NISA対応で、新NISA口座でも購入できる「ドリコレNISA」の他、毎月1万円という少額資金積立を可能にした「ドリコレ・ミニ」も加わった。個々の顧客のリバランスなどフルサービスを行うファンドラップでのNISA対応は同社独自の取組みだ。
さらに、ドリーム・コレクションによるローリスクのベース資産と、ハイリスクのアクティブ資産の間を取り持つものとして、ミドルリスクを受け持つ準ベース資産の概念が、数年前から導入された。このパートを受け持つのが、ノーロード・ファンドである「いちよし・グローバル株式ファンド(愛称:いちばん星)」だ。
同ファンドは日本の割安株と中小型株に着目し、日本、米国、欧州、新興国株式にそれぞれ投資する6本の厳選したファンドに分散投資するファンド・オブ・ファンズだ。購入時手数料が無料であるのとともに、信託報酬は基準価額が過去最高値を更新しない限り、極めて低廉であり、かつ最高値を更新した時のみ、前回最高値との差額から信託報酬を徴収する、実績報酬型(ハイ・ウォーター・マーク型)が採用されている。つまり、結果がともなわない限りは最低限の手数料しかもらわない、という潔さがあり、顧客側の“納得感”も高い報酬体系だ。
「当初、いちばん星の購入金額は1000万円からという大口向けでしたが、販売は順調に伸びました。また今年1月に行われたNISAの制度見直しで、NISA口座を通じて購入していただく分については1万円から買えるようにしています」(白石氏)。
またいちばん星に加え、分配金を非課税で安定的に受け取りたいという、シニア層のニーズに応えるため、新NISAに対応した隔月決算型ファンドである「いちよし・グローバル好配当戦略ファンド(愛称:ミズナラ)」も設定された。いちばん星と共に、準ベース資産の二枚看板を背負うという位置づけだ。3つのファンドを通じて、高い配当利回りが期待できる国内外株式、世界の不動産投資信託に分散投資するファンド・オブ・ファンズである。こちらもいちばん星同様、購入時手数料は無料で、実績報酬型(ハイ・ウォーター・マーク型)を採用している。そして、アクティブ資産には、中小型株投信や、中小型の個別銘柄の組み合わせを提案している。
いちよし証券では、中小型株の成長性に着目、以前からいちよし経済研究所の中小型株式のリサーチ能力に定評がある。また、グループ会社である「いちよしアセットマネジメント」は中小型株式運用に強みを持つ。アフターフォローを含めた適切なアドバイスと、これを活用したポートフォリオ運用が可能だ。
●図 いちよし証券の運用の考え方
※上記は、いちよし証券取扱い商品・サービスを基にしたポートフォリオの一例です。
今後、さらなる強化を目指す「家族ぐるみの資産運用アドバイザー」
前述したように、現時点では「第二回改革の断行」の途上にあるが、これからいちよし証券が目指す方向性はどうなのか。
「いちよし基準をベースにして、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの提供は言うに及ばず、同時にお客様の高齢化にどう対応するかを真剣に考える必要があります。もちろん、今の高齢者の方はお元気ですし、人生100年時代などとも言われていますが、いずれ生じるのが相続です。その資産は次世代に引き継がれていきますので、口座を開設していただいているお客様本人だけでなく、そのご家族ともお付き合いを深め、資産の承継も含めて良きアドバイスができるような証券会社を目指しています」(白石氏)。
現時点において、預かり資産営業を着実に実現している数少ない証券会社だけに、次の展開が注目される。
取材・文/鈴木雅光