<前編のあらすじ>

北海道在住の森山吹子さん(仮名・40代)は、ずっと両親に振り回された人生を歩んできた。

祖母と母親は長男ばかりを大切にし、父は男尊女卑。兄のまねをし、母親に抱きつけば、「気持ち悪い」と言われるなど、十分な愛情を受けてこなかった。それにもかかわらず、70代後半になった両親の世話をけなげに続けている。

一方で、親はいくつになっても勝手気まま。認知症の疑いがある母親に耐えきれなくなった父親は1人で入院。森山さんが母親を説得し、高齢者住宅に入れると、すかさず父親は退院し、自宅でひとり暮らしを満喫していた。

●前編:【母さんといることが限界だ」と涙の訴え…定年退職した父が“夫婦別居”を望んだ「切実な理由」】

老後破綻へのカウントダウン

施設に入所しても母親は、森山さんの頭を悩ませ続けていた。なぜなら両親の貯金が、たった250万円になっていたからだ。

「両親の年金額は、ひと月あたり2人で合計22万円。母の施設代や医療費は、全部でひと月16万円程かかります。両親があと何年生きるかわかりませんが、あと2〜3年でどちらかが亡くならなければ、両親は老後破綻すると思います」

父親は役職に就き60歳まで。母親は52歳までバリバリ働き、それぞれ退職金もあったはず。それはどこへ消えたのか。

その答えのヒントは森山さんの1歳上の兄にあった。兄は大学受験に失敗して専門学校に行き、卒業後は父親のコネで就職。しかし続かず、38歳のときに突然「社労士になりたい」と言い出し、親のお金で再び専門学校に行き始め、晴れて社労士になると、上京。4年間は平穏に働いていたが、別の事務所に移った途端、うつ病を発症した。

「詳しくは聞いていませんが、兄は仕事で大きなミスをしたらしく、東京から逃げるように退職して北海道に戻ってから、働いていた事務所に訴えられたみたいです。うつ病なので戦うこともできず、示談金を払ったらしいのですが、それも全額両親が出しています。両親に貯金がないのは、母が定年後も生活レベルを落とせずに散財してきたせいと、兄に使ったせいだと思います」