アクティビストと仕手筋の決定的な違い
村上ファンドが活躍した当時、日本においてアクティビストは「いかがわしい連中」という目で見られていました。特定企業の株式を買い占めるという点において、バブル経済の時に華々しく活躍した「仕手筋」のイメージと重なったからでしょう。
ただ仕手筋は、もっぱら自分たちの利益獲得を最大の目的として投機的な売買を繰り返し、株価のつり上げを行います。そこには投資先企業の企業価値向上といった大義名分は全くありません。あくまでも仕手戦に参加した人たちが、株式の売買でもうかれば良いのです。
もちろん、アクティビストが特定企業の株式に投資すれば、その企業の株価は上昇しますが、株式を一定数確保した後、経営に関与するのかどうかという点において、アクティビストと仕手筋は、似て非なるものといっても良いでしょう。
とはいえ企業側からすれば、「アクティビストが株式を買っている」となれば、緊張感が走ります。大株主となったアクティビストから、どのような要求をされるのかが分からないからです。
実際、どういう企業がアクティビストのターゲットになるのかというと、
1.現金をたくさん保有しているキャッシュリッチ企業
2.株価が長期にわたって低迷している企業
3.コーポレートガバナンスが機能していない企業
4.優良資産を潤沢に保有している企業
といったところでしょうか。特に1から3までをよく見ていただきたいのですが、有り体に言ってしまうと、これに該当する企業は、「経営が下手」であり、経営陣の能力が低いとも言えます。アクティビストとしては、こうした企業に経営陣を送り込んだり、さまざまな提案を行ったりして経営を立て直し、企業価値を向上させることを大義名分にしているのです。
もちろん、アクティビストはボランティアではありませんから、どこかで利益を得る必要があります。その利益の源泉は、投資した株式の値上がり益で賄われます。
企業価値が向上すれば、当然のことですが投資先企業の株価は値上がりします。そうなれば、アクティビストは投資した株式を他の投資家に譲渡するか、もしくは株式市場で売却することによって、莫大(ばくだい)な値上がり益を獲得できます。
また、アクティビストが投資先企業を非上場化するケースもあります。抜本的な経営改革を断行する場合、他の株主からの介入を防いで改革を円滑に進めるため、株式を非上場化してプライベート企業にしてしまうのです。
そして経営改革を行い、企業価値が高まったと判断したら、その企業の株式を再上場させることによって、アクティビストは上場益を獲得します。