「日本版スチュワードシップ・コード」によって、意識が大きく変化

こうして考えると、アクティビストも決して忌避すべき存在ではないことが分かります。

しかし、中にはこうした仕組みを利用して、投資先企業から利益を搾り取ろうとするアクティビストも存在します。

たとえば現金をたくさん保有しているキャッシュリッチ企業の株式を買い占めた後、増配や自社株買いを要求し、投資先企業が持っている現金を引き出そうとするのです。

この手のアクティビストのターゲットになってしまった企業は、企業価値を向上させるどころか、保有していた優良資産の取り崩しを余儀なくされ、逆に企業価値を下げてしまうことにもなりかねません。企業にとってアクティビストの存在は、もろ刃の剣でもあるのです。

つまり、アクティビストには大きく分けて2つのタイプがあると言えます。

ひとつは、企業からの収奪を目的にして敵対的な買収を仕掛け、投資先企業と真っ向から対立することなどお構いなしに、とにかく利益を得るタイプのアクティビストです。

これに対して、最近徐々に増えているのが、「エンゲージメント」といって、企業と対話や交渉を重ねることで経営体質の転換をはかり、企業と共に企業価値の向上を目指すアクティビストです。

また、企業との対話や交渉を重ねるエンゲージメントに関して言えば、最近はアクティビストに限らず、個人で簡単に購入できる投資信託でも積極的に実施するファンドが増えてきました。

これは良い傾向です。かつて投資信託といえば「物を言わない株主」として知られていましたが、2014年に「日本版スチュワードシップ・コード」が制定されたことによって、意識が大きく変わってきたのです。

アクティビストがよく使う「TOB」とは

さて、少し株式投資に関連したことにも触れておきましょう。

アクティビストが企業に投資する場合、多くはTOB(株式公開買付)といって、現在の株価に「TOBプレミアム」と称する上乗せ分を加味した株価を提示して、その企業の株式を保有している投資家から、経営権の取得に必要な株数を確保しようとします。

当然、TOBが発表されれば、実際にTOBが行われる前に株価は動きます。TOBプレミアムが公表されるので、それを加味した株価まで買われて値上がりするのです。

ここで投資家は2つの選択を迫られます。実際にTOBが実施される前提で、TOBに申し込むか、それとも株価が値上がりしたところで市場に売却するか、です。

ただ、TOBが発表されたとしても、交渉次第ではTOB自体が不成立になることもあります。仮に不成立になれば、株価は大きく下落してしまいます。それを考えれば、株価が値上がりしているうちに売却するのが得策とも言えるでしょう。