サブスクが増えている背景
これらサブスクが増えている背景には、人々がモノを持たなくなるというライフスタイルの変化があります。シンプルに暮らすトレンドは、このところ長く続いています。特に、不要な物を減らして生活に調和をもたらす「断捨離」、最低限度の物だけを持って生活する「ミニマリスト」などは注目を集めました。
モノを持つことが豊かさの表れだった時代は、だいぶ過去になりました。持っているモノを自慢してプライドを満足させるタイプの人は、バブルとともに絶滅したようです。モノを使い捨てる消費スタイルは地球環境に優しくないため、厳しく否定されるようになりました。ただし「物欲」は人間の基本的な欲求ですから、なくなってしまったわけではありません。買うものを慎重に選別する傾向です。この風潮にサブスクは合っています。
一方、最近では企業が、必ずしもモノを販売することにこだわらなくなってきました。
マーケティングのテーマは、「商品の提供」から「価値の提供」にシフトしています。例えば、「(穴をあける)ドリル」の販売は「商品の提供」です。しかし、実は顧客が求めるのは「ドリル」ではなく「穴をあける」ことです。これが顧客にとっての価値ならば、その提供方法はドリルをレンタルする、穴をあける技術者をドリル持参で派遣するなど多様です。
顧客が望む価値は、例えばCDが欲しいのではなく音楽を楽しみたい、服が欲しいのではなく様々なファッションを身につけたい、車が欲しいのではなく移動手段が欲しいなどです。サブスクは、こういった価値を提供するのに適しているのです。
さらに国内市場が拡大しない状況の中で、企業はビジネスを「フローからストックへ」とシフトさせています。人口も増加し景気も上向きであれば、企業は新たな顧客を次々と拡大すれば販売し続けられます。かつては、こういった「焼き畑農業」のようなフロービジネスが主流でした。ところが経済が縮小する現代は、顧客を囲い込んで持続的にサービスを提供し、長期的に収入を上げていくストックビジネスが重要になります。顧客に対して継続的に商品やサービスを提供するサブスクは、まさにストックビジネスです。
以上のように、ライフスタイル、マーケティング、ビジネススタイルの変化に対応する取り引き手段としてサブスクが注目され、活用されているのです。ただ一般の利用者は必ずしもサブスクがブームだから利用しているわけではありません。心理に訴える要素があるはずです。