一方で、長期金利を抑えたい人々も…
ただ、一方で長期金利に上昇してもらいたくないという力が同時に働いているのも事実です。
4月25日の金融政策決定会合に、新藤経済再生担当大臣が出席したのは、日銀の利上げをけん制する意味合いがあったという話が、金融情報筋の間ではよく言われています。
仮に今後、利上げが本格化すれば、実体経済に及ぼす影響は無視できなくなります。仮に長期金利が上昇した時、果たして政策金利である無担保コール翌日物金利を、現状の水準に張り付かせておけるのかという問題が生じてきます。
政策金利を引き上げれば、それはやがて短期プライムレートの上昇につながり、変動金利型住宅ローンの金利引き上げにつながってきます。それは個人消費にとってマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。政府としては、それを看過することはでない、という考えはあるはずです。
もうひとつ大きな問題があります。もし長期金利が上昇したら、日銀が大量に保有している国債の価格が下落します。それは、日銀のバランスシートを痛めることになりますし、何よりも新規発行の国債の利率が上昇すれば、国債を発行して資金を調達している政府にとっては、資金調達コストの上昇につながります。
令和5年の国債発行額は、総額で205兆7803億円にも達します。これだけの調達資金の調達コストが上昇すれば、さらに政府の財政負担は重くなります。
マーケットでは金利上昇圧力が強まる一方、政治的には上昇させたくない意向が強く、その綱引きが今後、行われることになるでしょう。したがって当面、金利が一方向に大きく進む可能性は、小さいと思われます。