そもそもなぜ私たちは“案外、安く”医療を受けられているのか
まず「医療・介護保険における金融所得の勘案」とは、何を意味しているのかについて考えてみましょう。
医療保険は、本人やその家族が、ケガや病気をした時、その治療にかかる医療費を国や保険会社がカバーしてくれる制度です。国や地方自治体によって運営されている医療保険が「公的医療保険」であり、民間の保険会社が運営しているのが「民間医療保険」です。このうち公的医療保険は国民全員に加入義務が課せられていますが、民間医療保険は任意です。
今回、金融所得の勘案で話題になっているのは公的医療保険なので、以下の文書での医療保険はすべて、公的医療保険だと認識していただいて結構です。
私たちがケガや病気をした時、病院に行って診断・治療を受け、終わったら受付窓口で診察料などを払います。
この時の金額は、もちろんケガや病気の状態にもよりますが、案外、安いと思いませんか。
比較対象として米国の事例を目にすることがあるかと思います。たとえばニューヨークの病院では、初診料が4万円とか、救急車で運ばれると15万円、入院室料は1日40万円、歯科治療が1本につき13万円などと言われますが、日本ではそんなにかかりません。それは、公的医療保険制度が今のところ、しっかり機能しているからです。つまり国民全員が公的医療保険への加入を義務づけられ、決して安くない保険料を負担しているからこそ、いざという時に安い医療費で、安心して医療サービスを受けられるのです。
また介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合うために設けられた制度で、40歳以上は強制加入ですが、加入者が介護サービスを受ける際にかかる費用を、一部負担で済むようにしています。
非常にざっくりとした言い方になりますが、医療保険にしても介護保険にしても、それらの保険料は、加入者の所得に応じて決まります。つまり所得が多いほど、保険料は上がります。