日本人が向き合うべきは「お金の問題」

幸福、あるいはウェルビーイングについては、近年研究が進められています。かつては幸福とは理屈ではない、と断じられていた部分にスポットライトが当たり始めています。

ウェルビーイングの向上、幸福度の向上を考えたとき、“心の持ちよう”は重要なポイントです。例えば、日々感謝や挨拶を声に出す人とそうでない人はウェルビーイングが違ってくるという研究があるそうです。

一方で、不安の解消を分析したとき、特に先進国に暮らす私たちにとって最も大切なのは「お金の問題」をスッキリさせることです。現在と将来のお金の不安というものはやっかいで、幸福の実感を小さくさせてしまうからです。「今月、赤字にならずにやりくりできるかしら……」「将来、心配なく老後を過ごせるのだろうか……」という不安を抱えているままでは、やはり幸せを感じにくくなります。

内閣府の「「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書」では、世帯年収が一定水準を上回ることが幸福度に強く影響するとされています。日々の生活の不安を解消できるくらいお金を稼げることは幸福度に直結しているというわけです。

第一生命経済研究所の「第12回ライフデザインに関する調査」によれば、家計の満足度と幸福度は強い関係があるとしています。もちろん家計の安定がもたらされ、不安がない方が幸福度は高くなります。

だとすれば、私たちはお金の問題ともっと向き合ってみることで、もっと自分の幸せを実感し、より高い幸福度を得ることができるかもしれません。それは、「たくさん稼げば幸せになる」という単純な話でもなければ「たくさん出費をすれば幸せが手に入る」という簡単な話でもありません。しかし、いくつかのヒントを知っているかいないかで、あなたはもっと幸せを手に入れられるようになるはずです。

本連載ではこれから、お金の不安を小さくし、幸せを上手に感じられるようなお金との関係づくり、ファイナンシャル・ウェルビーイングについて考えてみたいと思います。