荒れ果てた義実家
義実家に来るのは義父が亡くなって以来だった。
少し寂れたように感じる。
車を駐車場に止めると、武敏は車を降り、それに愛実も続く。まだ降りてこない幸子を無視して、2人で玄関を開いた。
愛実はそこでの光景に驚愕(きょうがく)した。
「なんだよ、これ……?」
清潔感が保たれていたはずの玄関には四方にゴミ袋が置かれ、廊下にも飲みかけのペットボトルやお菓子の包み紙が散乱している。
この家を見るだけで、幸子がどれだけすさんだ生活をしていたのかが分かった。
しっかり幸子と話をしたかったが、いろいろな感情があふれていたことと、優海を家で1人にしておけなかったので、取りあえず送り届けただけで、帰宅をすることにした。
孫から祖母へ
家に帰り、優海にも一連の話をリビングで聞かせた。優海は驚きつつも、事態を受け入れている。
「まあ、お爺(じい)ちゃんのこと、大好きだったもんね」
優海の言うとおりだ。愛実たちは夫を亡くした幸子の気持ちを考えていなかった。
武敏はがっくりと肩を落とす。
「母さんは強い人だって俺は思い込んでて、そこまで考えが至らなかった…」
「私もよ。同じ女なのに、分かってあげられなかった」
出てくるのは反省の言葉ばかり。しかし優海だけは前を向いていた。
「それよりもこれからどうするの? また一人ぼっちにするの?」
「いや、それはダメだ。まだパチンコに依存しているかもしれない。俺が逐一連絡を取るし、仕事終わりは毎日実家に顔を出すよ」
「私もそうする。できる限り、お義母(かあ)さんと話すようにするから。でも、優海はしなくていいからね。あなたは自分の将来のことを考えて」
愛実がそう言うと、優海はうなずいた。
「それじゃあさ、私が大学に進学したら、私の部屋をお婆(ばあ)ちゃんにあげたら。同居した方が何かと手っ取り早いでしょ?」
優海の発言に愛実たちは目からうろこが落ちる。同居をすれば、全てが解決する気がした。しかも優海から提案してくれたのだから、断る理由は何もない。
「これからはお爺(じい)ちゃんの代わりに、みんなでお婆(ばあ)ちゃんを支えてあげないとね」
優海の言葉に愛実と武敏は目を合わせ、思わず吹きだした。これでは誰が大人なのか分からない。
悔しいが、優海の言ってることは正しかった。