企業型確定拠出年金は一括で受け取ると「退職金」と見なされる

企業型確定拠出年金に加入している場合、「定年になったら、それで終わり」となんとなく思っている方も少なくありません。しかし、確定拠出年金はiDeCo(個人型確定拠出年金)の存在感が増すことにより、その活用の幅も広がっています。

例えば、60歳定年でその後5年間同じ会社で継続雇用というケースで考えてみましょう。60歳時点で、会社から退職一時金1700万円を受け取り、企業型確定拠出年金の加入資格を失うと同時に老齢給付金300万円を受け取る権利が生じるとしましょう。なお、試算の関係で数字はキリのよい数字を使いますので、これが平均だとは思わないようにしてください。

退職一時金は、文字通り「一時金」なので、そのタイミングで受け取る以外選択肢はありませんが、企業型確定拠出年金は老齢給付金を受け取る場合でも「一括で受け取る」「分割で受け取る」「併用する」の3択があり、またすぐに受け取らずに「運用のみを継続する」という選択肢もあります。さらに継続雇用で厚生年金加入をするのであれば、iDeCoに加入することも考えられます。

今回は条件を少なくするために、同じ会社に継続勤務するケースで計算を進めますが、ここで念のため定年後別の会社に勤務し、そこで改めて企業型確定拠出年金に入るというケースについても簡単に触れておきます。そのような場合、定年時に企業型確定拠出年金の老齢給付金を受け取ってしまうと、その後、企業型確定拠出年金には加入できなくなりますので、定年時の確定拠出年金については現金化し、次の会社の企業型確定拠出年金に移換し加入をする方が、メリットがあると考えます。

話を戻します。まず退職一時金1700万円と企業型確定拠出年金300万円を定年時に一括で受け取る場合の税金から考えていきます。企業型確定拠出年金の資産も一括で受け取る際は「退職金」と見なされます。従って、退職金は合計2000万円です。

さて、退職金にかかる税金ですが、これは給与などと比較すると優遇されるようになっています。特に勤続年数が長ければ長いほど有利になるようになっており、それを退職所得控除と言います。

この控除は、勤続20年までは1年あたり40万円、それを超えると1年あたり70万円で計算されます。例えば勤続35年の退職所得控除は1850万円(20年×40万円+15年×70万円)になります。つまり退職金2000万円のうち1850万円は税金がかからないのです。

ちなみに企業型確定拠出年金の加入期間についても退職所得控除が認められます。加入期間10年であれば400万円が税金のかからない枠として認められるのですが、同じ年にその他の退職金と一緒に受け取ると重複している期間(この場合企業型確定拠出年金加入の10年)は期間の長い勤続年数に吸収されてしまうため、なくなってしまいます。

また差額150万円はすべてに税金がかかるのではなく2分の1されます。つまり課税対象は75万円です。一般的に、課税対象となる金額はその他の所得と合算される「総合課税」となることが多いのですが、退職金は特別なのでその他の所得と切り離される「分離課税」となります。結果、所得税3万7500円、住民税7万5000円、合計11万2500円が支払うべき税金となります。