企業型確定拠出年金を分割で受け取ると「公的年金等控除」の対象に

では、企業型確定拠出年金の300万円を分割で受け取るとどうなるのかを考えてみます。退職一時金1700万円は退職所得控除1850万円内ですから非課税で受け取れます。企業型確定拠出年金の300万円は60万円ずつ5年に分けて受け取ります。

確定拠出年金の資産は分割で受け取ると「公的年金等控除」の対象となります。65歳未満であれば、年間60万円までは非課税の枠内となるため、この場合分割で受け取ると税金の支払いは不要となります。

このように退職一時金と企業型確定拠出年金を全部一時金として受け取るのか、一部分割で受け取るのかによって税金の支払額が異なるということは知っておいて損はないポイントです。

企業型確定拠出年金を受け取った後でもiDeCo加入は可能!

また企業型確定拠出年金の老齢給付金を受け取っても、iDeCoに新規加入が可能です。ご存じの通りiDeCoの掛け金は所得控除になりますから60歳以降も厚生年金に加入して働いている方の場合、節税をしながらもう5年資産形成をすることが可能です。

例えば年収500万円、所得300万円で働いたとしましょう。この場合もっとも税率の高いところが10%なので、月2万3000円の掛け金であれば年間2万7600円の節税効果が見込まれます。住民税も同率ですから合計5万5200円、5年間の継続で27万6000円もの税金を節約することが可能です。1年間の積立額分の税金が戻ると思えば相当大きなメリットです。

さて運用は3%で継続できたとしましょう。すると5年後の残高は約150万円になっています。この残高を一括で受けとる際、ここでの加入期間5年に対し退職所得控除200万円(40万円×5年)が有効となります。また確定拠出年金は75歳まで運用のみ継続が可能なので、そのまましばらく運用することも可能です。その後受け取る場合も、退職所得控除200万円は利用可能です。

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企業型確定拠出年金は、個人の資産形成の器と考えると非常に有利な制度なのですがどうしても会社の制度ということであまり重要視しない方が多いようです。しかし老後に向けて少しでもゆとりを持ちたいという方であれば、可能な限り有効な手段を活用したいものです。

今回はほんの数例の解説となりましたが、実際に退職間近になったら退職金を含め今後の資産全体を含めたライフプランを専門家に相談するなどしてご自身なりのベストな方法を探してみてください。