時価総額加重平均型ゆえに“分散度合い”は低下している

2つ目の注意点として、「全世界株式インデックス」は時価総額加重平均型の指数なので、時価総額の大きい、大型株の値動きに左右されやすいという特徴がある。現在は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットの4社だけで指数構成比の10%超を占め、10年前と比べると、上位銘柄の依存度が高まっている。その結果が、先述した指数全体の約60%を米国が占めるという実態になっている。

インデックスは少ないコストで、効率よく分散効果が期待できる投資方法ではあるが、近年、分散度合いが低下しているという事実は押さえておきたい。

歴史的円安が引き起こす“錯覚”に注意

3つ目の注意点は、近年の急速な円安進行がもたらす「錯覚」である。

突然だが、新型コロナウイルスが猛威をふるっていた3年前の2020年12月、1ドルが何円台だったか覚えているだろうか。

答えは103円。ドル/円は現在、147~150円前後で推移しているので、3年の間に4割以上も円安が進んだことになる。

この急速な円安進行は、「全世界株式インデックス」のほか、「S&P 500指数」や「ニューヨーク・ダウ指数」など、米ドル建て指数への連動を目指すインデックスファンドの成績を50~60ポイント程度押し上げている。上記指数のインデックスファンドは、3年間でプラス70~80%のリターンを記録しているが、このうち実に60ポイント程度は、円安進行によってもたらされたものである。意外に思われるかもしれないが、現地通貨ベースでリターンを比較した場合、足元3年に関しては、日経平均株価や東証株価指数への連動を目指すインデックスファンドの方が単純なリターンは高かった。ACWIの6割を占める米国株式市場が緩和的な金融政策と好調な企業業績を背景に力強い上昇を続けてきたことは事実だが、冷静にリターンを分解してみると、その勢いは以前と比べ落ち着いている。

為替変動も重要なリターンの源泉であり、外貨建て投資の醍醐味(だいごみ)ではあるのだが、あまりにも急速に円安が進むと、時に錯覚を引き起こす。足元3年の成績は、「追い風参考記録」程度に捉えておこう。

このように、「全世界株式インデックス」にも注意すべき点はある。特に、3つ目の為替変動について、向こう3年でさらに4割以上円安が進むとは考えにくいことから、指数の実力と為替変動を切り離して考えるよう、今から癖付けておいた方が良い。

まとめると、「オルカン1本勝負」でも良いのは、当面(5年以上)は使う予定がない資金、または、他に投資してみたいと思う商品が思い浮かばないという人になるだろう。「オルカン」はじめ「全世界株式インデックス」に投資するということはつまり、「今」の世界の株式市場を全面的に受容するということである。市場の転換点では大きな下落に見舞われる可能性も否定できないため、「1本勝負」の場合は特に、積み立てで時間分散を図り、じっくり時間をかけて投資し続けることが鉄則だ。新NISAの開始を機に、今一度商品性を確認しておきたい。