去る6月21日、当初の予定から大幅に遅れる形で、新NISAの成長投資枠の対象投資信託の第1弾が公表された※。
※ 投資信託協会のホームページ上で公表
そこで今回は、ファンドアナリストとしての所感と、現時点で把握しておきたい注意点について見ていく。
成長投資枠は、文字通り、長期資産形成にふさわしい投資信託のラインナップとすべく、以下の3つの除外条件が設けられている。
①信託期間20年未満
②毎月分配型
③ヘッジ目的以外のデリバティブ(金融派生商品)使用
運用会社各社は、上記の除外条件に加え、税法上の要件等を踏まえた上で、対象として判断した商品について投資信託協会に届出を行う。そして、届出のあった商品について、協会が取りまとめを行い、12月まで毎月1回リストが更新されていく。これが、成長投資枠の商品追加の流れである。
意外と多い? テーマ型投資信託のラインナップ
さて、今回、第1弾として公表された投資信託941本の内訳を見て、最も印象的だったのは、筆者が想像していたよりも、テーマ型や、特定の国・地域を投資対象とする投資信託の数が多かったということだ。
かねてより金融庁は、投資初心者に資産運用で致命的な失敗をさせないよう、万人向けではない、リスク性の高い商品について目を光らせてきた。その典型例がテーマ型投信である。また、テーマ型は、販売会社による、いわゆる回転売買を誘発しやすい商品としても指摘されてきた。
確かに過去、テーマ型の一部にそうした側面があったことは否定できないが、前回(上昇相場の立役者「半導体関連銘柄」へ投資するなら、テーマ型投信が有効な理由)でも触れた通り、付き合い方さえ間違えなければ、その商品性を一律に否定できるほど悪い商品ではない。特に新NISAでは、非課税投資枠が簿価管理になることで、ライフプラン等に応じて「使いながら増やす」ことが可能になるだけでなく、個別株投資も認められるようになる。テーマ型が多様なニーズの受け皿になる可能性は十分あり、そうした意味で多少“尖った”、特徴のある投資信託が完全に排除されなかったことは歓迎したい。
先述した通り、成長投資枠の対象商品はあくまでも運用会社側が、長期投資に資すると判断した上で必要に応じて約款変更を行い、最終的に投資信託協会に届出を行うことでラインナップへの追加がなされる。言い換えれば、成長投資枠の商品には、運用会社側に「長期で販売(運用)し続けられる」というコミットメントが存在するということになる。運用や情報開示の面で、この点には大いに期待したい。
一方で、投資家側も「新NISA対象だから安心」という考えは禁物だ。繰り返しになるが、テーマ型のほか、特定の業種や地域に投資対象を集中させた投資信託のリスクが総じて高いことは事実である。また、このようなタイプの投資信託で成功するには、解約のタイミング、つまり、テーマに取り残されないための“出口戦略”も重要な要素となる。自分で解約のタイミングを見極める自信がないなら投資しない方が良い。
新NISAは制度自体が恒久化され、現行制度のようなタイムリミットはなくなる。成長投資枠の利用についても、決して焦る必要はないので、順を追って検討していけば良いだろう。