リスクコントロール型がラインナップに入らなかった理由
冒頭で紹介した、現行の成長投資枠の除外条件で実に“厄介”なのが、③の「ヘッジ目的以外のデリバティブ使用」である。
というのも、デリバティブ取引は、運用効率を高める目的で、主にリスクコントロール型のバランス型ファンドなどで多用されているためである。デリバティブを活用することで、結果的に運用にかかる総コストを抑えられるというメリットもある。
当局が規制したいのは、ブル・ベア型やレバレッジ型など、投機的な運用を目的としたデリバティブ取引なのだが、今回の除外条件に照らし合わせると、リスクを抑えながら安定的な運用を行うタイプのバランス型も対象から外れてしまう。
実際に、6月に公表された第1弾のラインナップには、このようなバランス型が含まれていない。運用会社によっては今後、約款変更を行うなどして対応する可能性もあるが、現時点ではあまり期待しない方が良い。
NISAのデメリットは、損益通算ができないという点にある。したがって、少しずつでも着実にリターンを獲得・積み重ねていくことが重要であり、リスクコントロール機能の付いたバランス型は、本来なら“使い勝手のよい”商品なのである。なお、債券の組み入れ比率が高い投資信託についても、同様の理由で届出が見送られているケースが多い。本末転倒ではあるが、この点については当面様子見とするほかないだろう。
冒頭でも触れた通り、新NISAの対象銘柄は今後、制度開始前の12月まで月1回追加されていく予定だ。もし、自身の保有する、あるいは、新NISAで購入を検討している投資信託(特にバランス型)が今後もラインナップに入らない場合、通常の課税口座で保有することも選択肢に入れる必要がある。成長投資枠の対象商品は、投資信託協会のホームページで誰でも閲覧できるので、運用会社に問い合わせる前にまずは確認してほしい。