計算でiDeCoのもたらす税メリットの“スケール感”を把握しよう

では具体的に税のメリットがどのくらいあるのかを確認していきましょう。

例えば定年前で年収800万円のケースを考えていきます。年収800万円の場合、個人によって控除等条件が異なるので一概には言えませんが、今回は所得440万円と仮定しましょう。すると段階的に上がっていく所得税の乗率において、最も高い部分の税率が20%となります。

この方がiDeCoで会社員の掛金上限額である2万3000円を積み立てるとしましょう。すると年間27万6000円の掛金になりますから、年末調整にて5万5200円所得税が還付されます。一般的に会社員の場合、iDeCoの税メリットは、生命保険料控除等と同様に年末調整で国から送付される証明書を添付すれば手続きが終了します。

またその所得税の申告を経て住民税も計算されます。このときも年間27万6000円が全額所得控除されるので、住民税は10%の課税ですから2万7600円翌年の住民税が安くなるという意味です。合計8万2800円の節税は魅力的です。

よく比較されますが、生命保険会社の個人年金保険で同じ金額だけ保険料を支払っても、所得税の控除額は4万円が上限ですし、住民税は2万8000円が上限です。従ってこちらの税メリットは所得税が8000円、住民税が2800円で、合計1万0800円のみとなります。これが加入中ずっと継続する訳ですから、けっこう大きな差となります。

この方が60歳の定年後継続雇用を続けるうちはiDeCoに継続加入したとしましょう。年収は400万円、所得税の最も高い部分の税率が10%としましょう。会社員の場合、厚生年金に加入していれば65歳までiDeCo加入が可能ですから、2万3000円の拠出をさらに5年間継続します。

年の掛金合計は27万6000円ですから所得税の還付は2万7600円、住民税も同様2万7600円節税ができることになります。仮に50歳から60歳までが年収800万円、60歳から65歳まで年収400万円でiDeCoに月々2万3000円の積立をすると15年間で税のメリットが100万円以上となります。

当然年収により所得税の税率が異なりますから、継続雇用で収入が下がれば税のメリットも小さくなりますが、収入があるうちなら、この「掛金全額所得控除」というiDeCoならではのメリットを使わない手はないでしょう。

積み立てたお金は15年間で414万円、それに対して掛金の節税効果が100万円以上です。もちろんここから利益が生まれても税金は一切引かれませんし、65歳になって引き出す際も「退職所得控除」という特別ルールにより、このケースであれば、600万円まで課税されません。あるいは75歳までは非課税運用を継続してから引き出すという選択もできます。