借金返済と節約生活
結論から言えば、太一は複数のキャッシングサービスから合計で500万円の借金をしていた。借金はエステや脱毛サロンに通うために2年前からしていたらしい。大した額には達していなかったけれど、二人でためていた貯金は見事に使い果たされていたし、真理たちのけんかの原因でもある40万の美顔器も借金をして購入したものだった。
はじめは少額だったんだ。すぐ返せると思ったんだ。太一はおどおどと泣きながら言い訳を並べた。最初こそ真理はあきれていたけれど、ざんげを続ける太一を見ているとだんだんとかわいそうに思えてきた。それに、浮気はしていなかったことへの安堵もあった。真理はうなだれている太一の手を握った。
「分かった。いや、借金してまで美顔器買っちゃう気持ちは全然分かんないし、しかも黙ってとか本当は怒鳴りつけたいけど、もうしちゃったものは仕方がないから。一緒に頑張って返してこ」
真理の提案にうなずいた太一に、不安がなかったわけではない。それでも二人は夫婦だ。だから真理は太一を信じることに決めたのだ。
借金返済のためにやることは多かった。
まず管理しやすくするために、複数の借金を一本化した。それから水道光熱費などの固定費を徹底的に見直し、ランチの外食をやめて毎朝お弁当を作るようになった。当然、40万の美顔器は売り払った。
両親を頼ることも考えたけれど、しなかった。太一は両親と不仲だったし、真理の実家は自営業の酒屋で、相談したところで余計な心配をかけるだけだった。
ちなみに太一のキャッシュカードと通帳は真理が預かることになった。月のお小遣いはすずめの涙だったけれど、太一は友達の誘いを断ったりしてコスメを買うお金を捻出しているらしかった。
香苗には何でまだそんな無駄遣いを許すのかと叱られたけど、返済は長期戦だから強引な節約はやめようというのが真理と太一の結論だった。
劇的ではないにせよ、借金は少しずつ減っていった。それに今まで以上に協力しながら家計をやりくりしていかなければならなくなったおかげで、真理は太一と生活をともにしていることをより強く実感できた。
すべてうまくいっていると思えた。