米ドルの金利だけが一気に引き上げられた理由とは?
では、なぜ一気にパーソナル外貨定期預金(米ドル)の利率が、年0.01%から年5.30%に引き上げられたのでしょうか。
第一の理由は周知されているように、米国の金利上昇による影響です。ここ2年くらい米国ではインフレが急伸していて、金利水準が上昇傾向をたどっていました。米国を代表する金利である10年国債の利回りは、コロナショック前後の2020年3月9日時点で0.521%程度だったのが、2023年10月19日には4.98%まで上昇しました。
また、それよりもさらに期間の短い1年物になると、2020年3月9日が0.31%で、2023年10月19日は5.44%です。
このように、米国金利が上昇していることを見れば、確かに米ドル建て定期預金の利率が年5.30%に引き上げられるのも当然だと思われます。ただ、いささか納得できないのは、なぜ9月24日まで年0.01%だったのか、ということです。
米国1年国債の利回りを見ると、2021年中は0.04%~0.39%で推移していましたが、2022年に入ってからは連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策を反映して上昇傾向をたどり、2月には1%台、4月に2%台、7月に3%台、9月に4%台というように水準を切り上げ、12月末には4.71%まで上昇しました。そして、2023年5月以降は5%台で推移しています。
このように、米国における市場金利が上昇しているにも関わらず、なぜか1年物米ドル建て定期預金の利率は、年0.01%に据え置かれ続けたのです。
銀行は、預金を通じて集めた資金を、主に企業に対して貸し付けて、貸付金利と預金金利の間にある利ざやを収益にしています。
したがって銀行から見れば、預金金利をできるだけ低く、貸出金利をできるだけ高めた方が、より大きな利ざやを取れることになります。そう考えると、年0.01%という低い利率で米ドル建て定期預金を集め、それを年4%前後の利率で貸し出すことができれば、銀行は非常に大きな利ざやを稼げることになります。
ようやく、ここに来て米ドル建て定期預金の利率を引き上げてきたものの、すでに米国の金利は上昇の一途をたどっていたことからすると、これは少々うがった見方になりますが、銀行側はあえて米ドル建て定期預金の利率を低めに抑えていたのかも知れません。しかし、そう言っていられないような状況に、追い込まれたということなのでしょう。