そもそも米ドルの流通量が大幅に減っている

恐らく今回、三井住友銀行がパーソナル外貨定期預金(米ドル)の利率を一気に引き上げた根本的な要因は、世界中で流通している米ドルの流通量そのものが大幅に減ってきたからだと思われます。

新型コロナウイルスが感染拡大する以前からもそうでしたが、特にパンデミックが深刻化した時、米国の中央銀行組織であるFRBは、大幅な金融緩和を行いました。こうした過剰流動性があったからこそ、米国の株価はコロナショックでいったん大きく下落しながらも、あっという間にその下げ分を埋めて、過去最高値を更新できたのです。まさに、世界中に米ドルがあふれかえっていたからこそできた技です。

しかし、こうした過剰流動性はインフレを引き起こします。特に今回は米国内外で、インフレ要因が重なりました。

米国内では、コロナ禍が治まって経済が正常化へと向かうなか、本来ならコロナ禍でレイオフされていた人々が労働市場に戻ってくるかと思われていたのが、各種給付金などによって手元資金が豊かになったがために、労働意欲が大幅に後退しました。結果、さまざまな仕事の現場で人材不足が生じ、高い報酬で人材確保が行われました。

また、米国外では地政学リスクの高まりが、物価の押し上げ要因になりました。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて資源・エネルギー価格、あるいは食料価格が上昇したことに加え、米中対立の深刻化により、安い労働力を存分に活用できた中国をサプライチェーンから外す動きも出てきました。

これらはすべてインフレ要因です。このインフレを解消するため、FRBはこれまで大きく緩和していた金融を、一気に引き締めました。金融引き締めとは、過剰流動性を回収することです。結果、世の中に出回っている米ドルの流通量が減少してきたのです。