今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、安心な「取り崩し」の技術について紹介した野尻哲史著『60代からの資産「使い切り」法 今ある資産の寿命を伸ばす賢い「取り崩し」の技術』の一部を特別に公開します(全3回/本記事は第2回)。同書を解説する無料セミナー情報も!

●第1回:資産形成も大事だが…「資産寿命」を延ばす、「取り崩し」戦略も超重要といえるワケ

※本記事は野尻哲史著『60代からの資産「使い切り」法 今ある資産の寿命を伸ばす賢い「取り崩し」の技術』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集したものです。

人生100年時代、お金の面で考えるべきこと

まずは、具体的に取り崩しの方法に関して、基礎的なところをまとめていくことにしましょう。スタートラインは、保有している資産額と年間に使える資金の関係からです。

65歳で保有資産3000万円をすべて預金にしてあるとして、「公的年金以外に毎月10万円くらい使えるお金があるといいな」と考えたとします。

年間120万円ですから、ちょうど25年分の資産を保有していることになります。65歳から使い始めるとしたら、90歳までは「年金以外に10万円」が確保できることになります。これだとかなり安心感があるように思えますね。

ところが、先ほど紹介したように突然「人生100年時代」なんて言葉が流行して、「おいおい、90歳までの資金では最後の10年が足りなくなる」と気になり始めました。で、「対策は?」となると、年間85.7万円、「月に7万円程度使うのなら何とか100歳まで持つ」ということになります。そうなのです、対策は極めてシンプルで、「できるだけ使わないようにすること」となります。

これは2つの点で、60代にとってはプレッシャーになります。

1つは、できるだけ使わないようにして「それで幸せな生活か」という点です。第1章の冒頭を、60代は生活に満足しているか、という視点でまとめたのも、「できるだけ使わない」という対策が果たしてわれわれが目指しているものなのかと疑問に思うからです。

この満足度の水準は人によって大きく異なりますので一概には言えませんが、アンケート結果の分析からは、収入の多い人ほど、また支出を多くできる人ほど生活全般の満足度は高まる傾向がありましたので、「使わない」ことで満足度は低下するとみていいでしょう。