<前編のあらすじ>
外科医・中井恭一。ある日突然、妻が浮気の証拠をテーブルに叩きつけ、アメリカへ飛び立った。それから、恭一の順風満帆な人生が少しずつ狂い始めた。
●前編:【エリート外科医の大誤算…完璧な人生を狂わせた“たった1つの過ち”】
儚く終わった結婚生活の後始末
花林が出ていって5年になる。
あの頃の俺は相当取り乱していたように思う。花林から送られてきた離婚届に判を押す以外に、短い結婚生活の後始末が山ほどあったからだ。
タワマンの購入から2年ということもあり、住宅ローンは残高が家の評価額を大きく上回る“オーバーローン”の状態だった。売却すると巨額の借金だけが残る。
俺がここに住み続けることを前提にペアローンの解消を図ったが、花林の持ち分を住宅ローンと共に引き受ける「免責的債務引受」は融資先の金融機関からOKが出なかった。
やむなくローン自体を借り換えることになったのだが、ワケアリのケースに対応するローン会社を選ばざるを得ず、貸し出し金利が大きくアップして月々の返済額は3倍近くに膨れ上がった。
一方で、花林は弁護士を通して俺の不貞による精神的苦痛を主張し、500万円もの慰謝料を請求してきた。これは花林に同情した俺の親が払ってくれた。開業医の父親と花林は不思議とウマが合い、両親からは俺が悪いと一方的に責められた。