長期のシミュレーションをする上で3つの大きな要素

この3つの大きなポイントがあるために、ライフプランシミュレーションは不完全ではありますが、シミュレーションすることで安心が見えやすくなります。

働く期間より会社の寿命の方が短い

私は18歳から働いていますが、22歳から働く方も少なくないと思います。これまで60歳だった定年退職は65歳という会社も増えてきました。そうなると22歳から65歳までの43年間働くことになります。

働く期間は40年以上なのに企業の寿命の方はどうでしょうか。企業の与信やリスク管理などを業務としている東京商工リサーチ社の調べによりますと、2022年の倒産企業の平均寿命は23.3年だったそうです。
ちなみに、平均寿命では、最長が製造業の35.7年、次いで、卸売業27.9年、運輸業26.2年、小売業23.9年、農・林・漁・鉱業23.1年の順だそうです。平均寿命が最も短いのは、金融・保険業の12.5年というデータのようです。

他のデータからもチェックしておきましょう。少々古いデータなのですが、企業の生存率を調べたデータが、2011年の中小企業白書にありました。それによりますと、起業した後、10年後には約3割の企業が倒産、20年後には約5割の企業しか残っていないようです。
必ずもしも長く働けるとは限らないことは覚えておいてください。転職や退職をきっかけにライフプランシミュレーションを作られるかたも多くおられます。

公的年金・私的年金・じぶん年金

働き方によって、将来給付される公的年金(国民年金・厚生年金)が変わってきます。一生涯にわたって影響する大きなお金ですので、事前にシミュレーションをし、年金額を把握しておく、また受給の繰り下げをすることで、年金がなく預貯金を取り崩して生活する期間や、増えた年金額を予測することは安心につながります。

また、各種退職金に代表される私的年金も、あるから大丈夫、と言って安心できるわけでありません。今までこの連載でお伝えしている確定拠出年金(企業型や個人型)には、運用のリスク、損をする可能性もありますし、確定給付企業年金(DB)は運用がうまくいかなかった場合には減額される可能性も0ではありません。
特に退職金として複数の制度がある場合や、確定拠出や確定給付年金(DB)は、受け取り方法がいくつかあり、その選択によって受け取る金額も大きく変わってくることもあります。

しっかりと事前に制度を知っておきシミュレーションに反映させることで、60歳以降で受け取る時に「こんなはずではなかった」とならないようにしておきましょう。

インフレ率

これまで日本は、長くデフレでしたので物価が上がっていくことについて、あまり意識されていなかったと思いますが、ここ数年、きっかけはどうあれ物価が上がっていく怖さを実感されたと思います。

経済の基本的な仕組みでいうと、インフレ、物価が上昇しても、給料も上昇していく流れですが、急にインフレが始まろうとしている中で、給料が併せて伸びてくれる感じはありません。しかし、物価の上昇が待ってくれるわけでありません。
ですので、ライフプランプランシミュレーションをする際には、物価上昇率を加味します。もちろん日本銀行が提言している、” 2%の物価上昇率”の数字を入れてしまいますと、これまでの給与の平均の伸び率と物価上昇率に差が出てしまいますので、お金がた足りなくなる人ばかり続出してしまいます。
※2%は実はなかなか大きな数字でして、20年後には7割ほどの価値になってしまいます。

出所:筆者作成

ですので、先ほども言いましたが、本来であれば給料も上昇するはずですので、そこまで心配する必要はありませんが、リタイア後、60歳以降になりますと先ほど書きましたが各種年金が主な収入になります。

ちなみに、公的年金には、マクロ経済スライドと言い、物価(賃金)の上昇に合わせて年金額が増減する仕組みとなっています。これは調整率が働くため、そこまでダイレクトに年金額に反映されるわけでありません。