転職・定年退職したらどうなる?
DBも企業型DCも社員の老後の生活を支える資金として、定年退職や一定の年齢以上に達した人が受け取ることを想定していますが、当然、短期間で退職する人や転職して別の会社に移る人もいます。
そんなとき、これまで会社が積み立てたDBやDCの年金資産はどうなるのでしょうか?
DBの場合
まず、DBの場合は、勤続3年以上で中途退職すると脱退一時金が支給されます。また、転職する人は、脱退一時金を受け取らず再就職する会社にDBの資産を持ち運んで運用を続けられる場合があります。
再就職先の会社に、DBの資産を受け入れてくれる制度がない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換して、自分で積み立てと運用を続ける方法もあります。
企業型DCの場合
一方、企業型DCは、原則として60歳になるまでは年金資産を引き出せません。脱退一時金が支給されるのは年金資産が1万5000円以下などかなり少額か、1万5000円以上でも拠出した期間が5年以内で年金資産が25万円以下などいくつかの条件すべてに当てはまる場合のみ。
企業型DCの資産がある人が転職した場合は、転職先に移換可能な企業年金制度があれば、資産を移して積み立てや運用を続けることになります。
こちらも、再就職先に該当する制度がない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換して、自分で掛金を拠出し運用を続けられます。
〈DBと企業型DCの移換選択肢〉
企業型DCは、会社を辞めたとき、手続きせずに6カ月放置すると、国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。実は、転職や退職時に移換手続きを行わない人が驚くほど多いのです。
「令和3年度国民年金基金連合会業務報告書」によると、2022年度3月末時点で自動移換者は108万3116人にのぼり、自動移換された年金総額は2587億5200万円にのぼります。
国民年金基金連合会に自動移換した企業型DCの年金資産は、運用がストップするばかりか、自動移換手数料が差し引かれ、さらに毎年管理手数料も引かれてどんどん目減りしてしまいます。
このような事態は、会社の企業年金制度を確認せず、短期間で中途退職や転職をした場合に起こりやすいといわれています。退職金や企業年金のことは会社任せにしがちですが、実は、自分で手続きしないと損をすることも多いのです。
会社の制度がなんであれ、自分が加入する制度の特徴をよく理解しておくことが重要です。あらかじめわかっていれば、転職、退職、定年といった節目で、自分にとってのベストな選択肢が見つけられるのではないでしょうか。