運用業界にとって危機的状況と言えるのか?

では、この状況が運用業界にとって危機的な状況なのかどうなのか、という点について考えてみたいと思います。

確かに、信託報酬率がそもそも低いインデックスファンドの残高急伸と、サードパーティーとなる外資系運用会社への外部委託が増えれば、運用会社が得られる収益は減少せざるを得ません。

記事中でも、「日興リサーチセンターによると、大手7社では22年度の資金流入額のうち約7割をインデックス型が占め、5割未満だった21年度から急上昇した。3月末時点でのインデックス型の残高は16兆5000億円で、全体の約3割を占める規模に拡大した」とあります。

また、これも記事にありましたが、海外の運用会社に支払う「委託調査費」は、前期が7社合計で1032億円にも上っているということです。

かつて、日本の運用会社も海外拠点を構えていた時期はありましたが、バブル経済の崩壊によって、日本の投資信託市場が大きく縮小していく過程のなかで、日本の運用会社は海外拠点を整理し、同時に海外の運用会社に運用そのものをアウトソースする動きが広まりました。

特に昨今、個人の長期的な資産形成において、「長期、分散、積立投資」がもてはやされるようになり、個人でも投資信託を活用して、米国をはじめとする海外に資産を分散させたいというニーズが、徐々に広まりつつあります。それを考えると、これからもますます海外の株式・債券市場に投資するファンドの本数は、増加傾向をたどる可能性があります。

加えて2024年1月からは、新NISAがスタートします。口座開設窓口となる多くの金融機関は、少しでも自社に運用資金を取り込むため、個人に人気の高いファンドをラインナップに据えてくるでしょう。

その中核が、ローコストなインデックスファンドばかりだと、さらに個人資金の多くが、運用会社にとって収益性が低いインデックスファンドにばかり集中する恐れがあります。