DCガバナンスの視点から受託者責任を果たす目的で、投資信託のモニタリングや入れ替えを検討・実施する企業も少しずつ増えています。そこで、投資信託のモニタリングに役立つDC商品マーケットの最新状況を、投資信託評価会社である三菱アセット・ブレインズの標氏に解説していただきます。
※この記事は、2023年7月27日(木)に実施したWEBセミナー「最新DC 投信マーケット解説2023年7月号」を記事化したものです。
——早速2023年4月-6月のDCマーケット状況について伺いたいと思います。まずはアセットクラスごとのパフォーマンスをお聞かせください。
図1は過去2年間のファンド分類別の累積パフォーマンスを示したものです。2022年は株式・債券等が同時に下落し、幅広い資産でパフォーマンスは軟調となりました。2023年は米国発の金融不安などから一時軟調な推移となりましたが、4月以降はインフレ率の一服、景気悪化懸念の後退などから回復基調に転じました。
2023年4月-6月の直近3カ月の推移をみると、4月は前月のシリコンバレー銀行の経営破綻を発端とした金融不安が和らいだことから世界的に株価は上昇しましたが、債券市場はおおむね横ばいでした。為替市場では、米ドル・円、ユーロ・円ともに円安が進行しました。米国と欧州で追加の利上げが見込まれる一方で、日本では日銀による大規模な金融緩和政策が維持されたことなどが影響し、国内と海外の金利差拡大から円安が進行しました。
図1 分類別累積パフォーマンス 拡大図表示
出所:三菱アセット・ブレインズ
5月は米債務上限問題や主要国の追加利上げ観測により、米国と欧州の株価の上値は重い展開となりましたが、日本株式は、国内企業の好調な決算発表や脱デフレ・賃上げへの期待、東京証券取引所によるPBR1倍割れ企業への改善要請など複数の要因から、海外投資家の買いが強まり上昇しました。債券市場では、金融引き締め観測の強まりから金利は上昇基調で推移しました。為替市場でも引き続き円安が進行しました。
6月は米国の金融当局が当月は利上げを見送るとの見方が強まり、米国株式を中心に上昇基調で推移しました。利上げは市場の予想通り見送りとなりましたが、当局が年内で2回の追加利上げを見込んでいることが明らかになると、やや軟調な推移となりました。しかし、月下旬に発表された米経済指標は堅調で、景気の底堅さが確認されたことから、再び上昇に転じました。債券市場は安定的に推移した一方、為替市場ではユーロを中心に一段と円安が進行しました。
次に分類別に直近3カ月のパフォーマンスランキングを確認します(図2)。まず、2023年4月にパフォーマンスが良かったのは、国内リート、外国リートになりました。前月からの景気後退懸念も後退し金利も安定的に推移したことから、リート資産が上昇しました。
5月は、外国株式、国内株式などが上昇しました。生成AIに対する注目が集まったことで半導体関連を中心とするハイテク株やグロース株が大幅に上昇したことや、外国為替市場で円安が進行したこと、国内株式では海外投資家の買いが強まったことなどがプラスに寄与しました。
6月は、国内株式、外国株式、外国リートなど、リスク性資産が大幅に上昇しました。米国の債務上限問題が決着し、投資家の買い意欲が強まりました。特に、国内株式が引き続き力強さを見せ、日経平均株価は1990年3月以来となる約33年ぶりの高値をつけました。
図2 分類別パフォーマンス 拡大図表示
出所:三菱アセット・ブレインズ
以上のとおり、米国を中心としたインフレ率の鈍化や堅調な経済指標の発表などから、景気悪化懸念が後退し、リスクオンの相場展開となっています。