——2023年4月-6月のDCファンドの状況について教えてください。

ここではDCファンドの資金流出入動向について確認します(図3)。4月の資金流出入額は約70億円の流入超、5月は約300億円の流入超、6月は約1,010億円の流入超となりました。徐々に流入額が増加し、6月は3カ月ぶりに1,000億円超の資金が流入しました。資金流入額は、多い順に、外国株式型(約390億円)、複合資産型(約350億円)、国内株式型(約220億円)となりました。

図3 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に直近6カ月の資金流出入額の累積は、外国株式型が約1,080億円、複合資産型が約1,420億円となっています(図4)。米国発の金融不安などから外国株式型では資金退避が一部見られましたが、現在は市場が落ち着きを取り戻したことから、再び流入が強まっています。

他方、複合資産型は安定的に資金を集めました。複合資産型では、相場の動向に応じてスイッチングを行う加入者は比較的少なく、市場環境に左右されずに資金が安定的に流入する傾向にあるようです。

国内株式型にも約400億円と相応の資金が流入しました。特に、2023年6月に200億円超の資金が流入しています。先ほどお話しした通り、国内株式市場が活況を呈していることが背景にありそうです。

図4 ファンド分類別 月間流出入額推移(DC専用ファンド) 拡大図表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか、外国株式型と国内株式型の2つのカテゴリーについて確認しましょう。

まず、外国株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します。
ランキング表(図5)のとおり、上位15本のうち12本がMSCIコクサイ指数などの世界株価指数に連動するパッシブファンドとなりました。

パッシブファンド中心に資金が流入する傾向に変化はありませんが、10位には「野村世界ESG株式インデックスファンド(確定拠出年金)」がランクインしました。当ファンドはFTSE 4Good Developed 100 IndexというESG指数に連動する投資成果をめざすパッシブファンドです。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Corporate Governance)の頭文字をとった略称で、長期的な企業の成長に資する概念・投資手法として注目されています。当ファンドでは、これらESGの取り組みが優れた世界の企業の株式約100銘柄に投資を行います。

アクティブファンドでは、14位にランクインした三菱UFJ国際投信の「<DC>ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド」をご紹介します。実質的な運用を行うベイリー・ギフォード社は100年以上にわたる歴史を有するイギリスの独立系運用会社で、グロース株運用に強みがあります。当ファンドは有望な30銘柄くらいに集中投資するアクティブ性の強い外国株式ファンドですので、優秀なファンドマネジャーに資金を委託し、株式市場を上回るパフォーマンスを期待したい加入者にとって魅力的なファンドと言えます。

図5 2023年6月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ

次に、国内株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します(図6)。上位15ファンドのうち13本がパッシブファンドとなりました。パッシブファンドが中心となったのは、外国株式型と同様です。連動する指数は12位の「野村日経225インデックスファンド(確定拠出年金)」を除く12本すべてがTOPIXに連動するファンドです。金融機関の窓口で販売されているファンドでは、日経225のパッシブファンドが中心であることと比べると対照的となりました。DCの世界ではより幅広い銘柄に分散投資するTOPIXの方が好まれているのかもしれません。

アクティブファンドでは、10位に「大和住銀・DC日本バリュー株ファンド」がランクインしました。名前のとおり、各種投資指標により割安と判断される銘柄を重視した銘柄選択を行うバリュー株ファンドです。定量分析モデルによるスコアリング結果にアナリストの定性分析を加え、ファンドマネジャーが最終的に銘柄選択を行います。バリュー株運用はこれまで苦戦が続いていましたが、ここ1、2年でグロース優位の相場環境からバリュー優位の相場環境へ転換が一部みられました。バリューとグロースどちらが良いというものはありませんが、どちらの相場環境でも一定程度の運用成果を上げるためには、スタイル分散を意識してバランスよくファンドを保有することも選択肢の一つと言えます。

図6 2023年6月 国内株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示

※公社債投信等を除くDC専用ファンド 出所:三菱アセット・ブレインズ