標的は高齢者から若年層へ

この相談件数で注目したいのが、今回のテーマでもあるのですが、どうやら若年層の金融詐欺被害が増えているようなのです。

同データは相談者の年齢別構成比も公表されているのですが、2016年の数字によると、相談件数が圧倒的に多い年齢層は65歳以上の57.5%で、60歳以上65歳未満の9.4%とあわせた比率は66.9%にも達しています。この数字からも、当時の金融詐欺の被害者は高齢者が中心であることが分かります。

ところが2021年に至るまで65歳以上の相談件数は年々低下傾向をたどっています。2022年は前年に比べて若干上昇しましたが、それでも17.8%に過ぎません。ちなみに2021年は15.2%まで低下しました。

その一方で上昇しているのが40歳代以下の相談件数です。

2016年時点における40歳代以下の相談件数は、全体の16.1%でしたが、それ以降は年々上昇傾向をたどり、2022年は50.8%を占めています。これに50歳代を加えると、69.4%が現役世代からの相談になります。

40歳以下の相談件数の比率を時系列で見ると、

2016年・・・・・・7.6%
2017年・・・・・・28.3%
2018年・・・・・・39.0%
2019年・・・・・・44.3%
2020年・・・・・・55.8%
2021年・・・・・・55.8%
2022年・・・・・・50.8%

上記のようになります。

詐欺師は「将来不安」へ漬け込んでいる

2017年以降、2020年にかけて毎年のように大幅増となっていますが、この間に、若年層を中心にして将来不安が高まっているのと無縁ではなさそうです。

特に2019年は金融審議会市場ワーキング・グループが出した報告書で「老後2000万円問題」がクローズアップされ、現役世代を中心にして老後不安が高まりました。老後不安の最たるものは、健康問題もさることながら、やはりお金の問題は避けて通れません。

年金不安に加え、給料が横ばい続きのなかで貯蓄がなかなかできず、楽にもうかりそうな投資話につい乗せられてしまい、だまされてしまったというパターンが、40歳代以下の資産形成層を中心にして増えているように思えます。