金融詐欺に起きている標的の変化

しかし、最近はいささか様相が変わってきているようです。

警察庁が毎年、取りまとめている「生活経済事犯の検挙状況等について」によると、実は比較的若い世代の被害が増えていることを示す数字が出ているのです。

生活経済事犯とは、国民の安心・安全な生活を脅かす恐れのある犯罪のことで、詐欺的な投資話などに誘導する利殖勧誘事犯、訪問販売や電話勧誘販売に関連する特定商取引等事犯、ヤミ金融事犯、廃棄物事犯などが含まれています。ちなみに本連載のテーマは金融詐欺であり、「利殖勧誘事犯」が該当します。

この利殖勧誘事犯の数字を見ていくと、検挙事件数はこの10年、それほど大きな変化はありません。大体、年間37件から41件の間で推移しています。

また被害額は年によって大きなぶれがあり、そこに明確なトレンドは見いだせません。金融ビッグバンで自由化が進められた直後、2001年の被害額は1890億4449万円と大きく跳ね上がりましたが、その後は100億円を割り込んだこともありますし、2020年は4488億円まで急増し、2022年は157億円にとどまっています。

金融詐欺事件の場合、ひとつの事件で被害額が10億円に満たないこともあれば、1000億円規模まで膨らむこともあるため、その年に大きな被害を伴った事件があったかどうかで被害額が大きく変動するのです。

ただ、ひょっとしたら年々、金融詐欺問題が深刻化しているのではないか、と思われる数字があります。それは「利殖勧誘事犯に関する相談受理件数の推移」です。これは詐欺の被害に遭ったかもしれないと思った人たちが警察署に相談した際の件数を示しています。

この相談件数が、この数年で大きく増えています。2017年の相談件数は1314件でしたが、その後、年々増加傾向をたどっていて、2021年は3109件になりました。2022年は2584件へと減少していますが、過去6年で見ると明確に増加トレンドを描いています。