今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は人生を豊かに生きるための具体的な「お金の使い方」について解説した大江英樹の『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』の一部を特別に公開します(本記事は前編)。著者本人が同書を解説する無料セミナー情報も!
※本記事は大江英樹著『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社)から一部を抜粋・再編集したものです。
「お金がないから」というごまかし
50代から必ず出てくるセリフ
さて、いよいよ本節に入ります。この章の最初の節は「好きなことにお金を使おう」ということについてです。
私は企業からの依頼で、50代の社員の方向けにセミナーをすることが多いのですが、そんな時にいつも言うのは、「60歳になって定年になったのであれば、そこからは仕事でも趣味でも何でもいいから自分の好きなことをやりましょう」ということです。
すると、それに対して多くの参加者が口にするのが、「好きなことをやりたいけれど、お金がないからできない」、そして「好きなことといっても、何をしたらいいのかわからない」という2つのセリフです。
ここでは最初の「お金がないから……」という言葉について考えてみたいと思います。
「お金がない」ってどういうこと?
「お金がない」という理由は、一見もっともらしい理由に思えます。でも、もう少し深く考えてみましょう。「お金がない」というのはどういう状態をいうのでしょうか。
現金や普通預金にまとまったお金がないというなら、それはほとんどの人がそうでしょう。家に大金を置いている人なんてほとんどいませんし、預金だって少しまとまれば、定期預金や投資に回したりするでしょうから、現金や普通預金をたくさん持っていないからといって「お金がない」というのは少し違うと思います。
普通、「お金がない」というのは、「生活が苦しい」「お金の余裕がない」ということを指すのだと思います。これはたしかに、そういう人が世の中に一定数いることは間違いありません。でも私が研修講師を依頼されるような、比較的大きな規模の会社で50代まで働き続けてきた人であれば、そういう人は、いたとしてもそれほど多くはないでしょう。
にもかかわらず、ほとんどの人が「お金がない」と言うのは、いったいどういうわけなのでしょう。
おそらく「お金がない」と答える人の真意を正確に表現すれば、「そんなものに使うお金はない」ということなのだと思います。これならよくわかります。要は価値観の問題だからです。
たとえば、私は駅から少し離れた団地に住んでいるので、買い物に行くのも駅に行くのも自分で自動車を運転していきます。で、乗っているのは軽自動車です。
私の知人にはポルシェに乗っていたり、ベンツを持っていたりする人もいます。でも私は「ベンツに乗るなんて、そんなお金はない」という言い方はしません。私にとって、車は単なる移動手段で、それ以上の価値は何もないので、そんな高級車を買う意味はまったくないからです。ベンツであろうが軽自動車であろうが、使えればそれでよいので、別にベンツやポルシェに乗っている人をうらやましいと思ったことは一度もありません。まさに「そんなものを買うために使うお金はない」のです。
これは自慢にもなりませんが、私は今まで一度も、自分の車を自分で洗ったことがありません。よほど汚れがひどくなると、ガソリンスタンドの自動洗車を利用することもありますが、そもそも自分で洗車するなどということは私にとっては何の価値もない、もったいない時間なのです。この事実からも、私が自動車にお金をかけることには何ら価値を見いだしていないということがおわかりいただけると思います。