好きなものはもったいないとは思わない

逆に私がお金をかけるのは旅行です。50歳を過ぎてからの旅行では、値段を気にせずに、高級で居心地のよい宿に泊まるようにしています。移動もすべてグリーン車です。

人からは「よくそんな贅沢ができますね」といわれることもありますが、私にとって、旅行は最高の気分転換で、日常とは違った環境で思考にふけることができる、最も快適な機会なのです。

実際、旅行で考えたことや思いついたヒントが、コラムになったり本になったりして、ヒットしたこともあります。私は自分自身、寝ている時以外、すべて仕事だと思っていますから、見るもの、聞くものは全部、私にとっては取材なのです。

つまり、旅行はある意味、私にとっては投資ですから、楽しみであると同時に、収益を生み出してくれる源泉にもなっています。

年に数回、そういう投資のためにお金を使うことは、まったくもったいないと思いません。でも私にとって、普通の車を買うことすらもったいないので、安い軽自動車に乗っているのです。面白いことに友人から、「お前よく、そんな豪勢な旅行に行けるなあ、よっぽど金があるんだなあ」と言われたことがありますが、そういう彼が乗っている車はメルセデスです(笑)。結局、人は誰も、自分が本当にやりたいと思っていることや、心から欲しいと熱望しているものに対しては、お金を惜しむことはしないのです。

「いや、そんなことはない、食うや食わずの人にとっては、いくらやりたくてもできないことがある」という意見もあるでしょう。それはその通りです。私は子どもの頃、父親が事業に失敗し、小学校の給食費も払えないという本当に貧しい生活を経験していますので、それはよくわかります。

でも、世の中の人がみんなそういうわけではありません。ほとんどの人は生活水準に差があっても、その中で優先順位をつけて、自分にとって大事なことにお金を使っているはずです。ですから、誰でも自分のやりたいことに、何の遠慮もすることもなくお金を使えばいいのです。