もう食品会社じゃない? 電子材料事業で急成長する味の素
私たちにとって味の素は、調味料や食品の会社として身近です。事業別の売上高も「調味料・食品」や「冷凍食品」が大部分を占めています。
【事業別の売上高(2022年3月期)】
しかし事業別の利益では「ヘルスケア等」の割合が2番目に大きく、2022年3月期では全体の35%以上を占めました。近年は成長速度も顕著で、利益は前々期比で2.2倍以上になっています。近年の株価上昇は、このヘルスケア等事業が評価されたことが理由の1つだとみられています。
【事業別の事業利益】
出所:味の素 財務ハイライト
ヘルスケア等事業は、医療分野などの「バイオファーマサービス&イングリディエンツ」と、半導体向け材料などの「ファンクショナルマテリアルズ」で構成されています。事業利益は前者で約162億円、後者で289億円と、意外にも半導体向け材料の方が大きくなっています(2022年3月期)。
【「ヘルスケア等」を構成する主な事業】
味の素の電子材料事業は、「味の素」の製造過程で生じる副産物を有効活用する手段としてスタートしました。プラスチック用の難燃剤やエポキシ樹脂の硬化剤といった機能材料を先行して開発し、そして1999年にパソコン用半導体パッケージ基板の絶縁材として「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」が誕生します。
それまで絶縁材には主にインクが用いられていましたが、フィルム化することで取り扱いの難しさが飛躍的に改善され、微細化していく高性能半導体向けに大きくシェアを伸ばしました。味の素によると、現在では世界の主要なパソコンのほぼ100%のシェアを握っているようです。